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【レビュー】スイートタイム~セオが歩く心の風景-『Snowbird』

2017年5月25日

『Snowbird』
Sean Baker/11:52/アメリカ/ファッション/2000

作品詳細はこちら
http://www.shortshorts.org/2017/prg/ja/1269

 

投げ捨てられた粗大ゴミがあちこちに散らばる荒れ地を、手作りのケーキを持った女性セオが歩いてゆきます。その地域に住む友人達のトレーラーハウスを尋ねて一歩づつ。KENZOの鮮やかなプリントドレスを着た彼女が、金色の髪をなびかせ、オレンジ色の乾いた大地を歩く姿は、なんとなく現代的な天使のようにも思えました。

 

荒れ地の住人達は、突然の手作りケーキの振る舞いに喜び、ケーキ食べつつそれぞれのやり方でセオとのたわいもないおしゃべりを楽しんでいるようでした。セオはなぜケーキを焼いたのでしょうか。日頃からケーキを作ったりなどしない人が、ケーキを焼くとしたら、それは何か特別な日だからかもしれません。大切な人と楽しいひとときを過ごしたくて慣れない料理やお菓子づくりを頑張ってみる。恋をした人なら誰しも一度はそんな経験があるでしょう。

 

街から離れ、乾いた大地に点在するトレーラーハウス。周りには無造作に打ち捨てられた粗大ゴミ。そのゴミにさえ” OCCUPIED  ” 「使用中」と殴り書きされている社会。雑多な生活感の溢れる家ばかりなのに、住人が着ている鮮やかな色や模様のプリントの服のおかげでしょうか。 彼らから悲惨さは感じられず、むしろ散らかった家の中や投棄されたゴミにより、かえって味のあるアートな空間だと思えてくるのが不思議でした。

それはもしかしたらファッションの力、KENZOという服が持つ明るさのパワーから来るものなのかもしれません。彼らのそれぞれの暮らしの中にある彩りと服の鮮やかなコントラストがとても印象深かったです。
淡々と続く不思議な世界観を心地良く感じ始めた頃、セオがボブという黒人男性の家を尋ねたところから物語が一気に動き始めます。

どうか、どうか、最後の瞬間まで、彼らのトレーラーハウスでの物語を見つめて下さい。ラスト20秒、まばたきをしたあなたはきっと後悔します。後で一緒に見た人とどんな風に感じたか話し合ったり、一人でご覧になったあなたは誰のことを思い浮かべたか自分の心を覗いてみたりされたら、さらに作品を深く味わえるかもしれません。ショーン・ベーカー監督の描いた11分の物語に私は引き込まれてしまいました。ぜひ、みなさんも映画祭のシアターで、その美しくもシュールな世界観に浸ってみて下さい。

 

作品詳細はこちら
http://www.shortshorts.org/2017/prg/ja/1269

—この記事はボランティアライターの協力で制作されました—

【ライター名:suntammy】

数十分という短い時間で描かれるショートフィルムの世界。
そのぎゅっとつまった味わい深さに惹かれています。
映画を観るほか、街や公園を歩いて心にとまったものを
写真に撮ったり、美味しいものを食べたりするのが好きです。
映画祭にご来場頂いた方々に素敵なひとときを過ごして頂け
たら嬉しいです。

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