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【レポート】今年も!台湾・高雄映画祭から多彩なゲストが登場!,6/22, iTSCOM会場

2018/06/23

6歳以下のこどもも楽しめる「キッズプログラム」や、60年前のゴダール作品も上映した「フランス映画祭2018~短編作品集」など、親子連れからコアな映画ファンまで、本日も誰もが楽しめるバラエティ豊かなラインナップ!さらに、3つのプログラムでは、上映後のQ&Aセッションに、 監督、出演者から、海外映画祭のスタッフまで多彩なゲストが登場してくれました。

 

ノンフィクション プログラム 2 supported by ヤフー株式会社

東京を拠点に、東ロサンゼルス発のチカーノ音楽を日本に広めようと奮闘する音楽プロモーター兼レコード会社オーナー・宮田信さんを追った短編ドキュメンタリー『アワ・マン・イン・トーキョー』。ミュージシャンたちの演奏と、宮田さんや仲間たちの言葉が、“心を失わずに生きること”の美しさを感じさせてくれます。

『アワ・マン・イン・トーキョー』に出演の宮田信さん。Joe BataanのTシャツにもチカーノ愛があふれています。

上映後のQ&Aには、出演者の宮田さんが登場し、まるでドキュメンタリーの続きのように、DJ JOHNとの音楽談義で盛り上がりました。宮田さんは、メキシコ系アメリカ人によるチカーノ音楽の魅力は、彼らを虐げてきた社会への抵抗から生まれた、アメリカ色でもメキシコ色でもないユニークさにあるといいます。その文化は、音楽だけでなく、サブカルチャー、町の風景、食べ物などあらゆるものに浸みわたっているそうです。

さらに、DJ JOHNが以前仕事仲間のラジオディレクターから言われて印象に残ったという「日本には本当の意味での音楽教育がない」という言葉を伝えると、話題は若者の洋楽離れに。宮田さんは、「昔はテレビでJAZAフェスティバルをやるような時代があったが、今はそういったものはなくなり、日本以外の文化に触れる機会が減っています。その責任は大人にあると思います」と話してくれました。

 

シリア北部の都市・コバニで、イスラム過激派組織との戦うクルド人女性兵士たちの姿を追ったオランダのドキュメンタリー『メリエム』。ごくごく普通の女性たちが銃弾が飛び交う戦火の地で戦っている姿に、戦争が日常化している現実が映し出されています。

プロダクションアシスタントのMeryem Dipdereさんは、クルド人女性たちの命がけの活動をもっと世界の人々に知って欲しいとの想いで本作品に携わったといいます。イスラム過激派の目をかいくぐってイラク経由でコバニに入り、5回にわたって撮影を行ったそうです。

女性兵がスマホを使って、スナイパーの位置を確認する映像が衝撃的でしたが、これは他に使える機材がないために、あらゆるものを駆使して戦わざるを得ない状況を示しているのだそう。ちなみに、この作品のロングバージョンは、『ラジオ・コバニ』というタイトルで公開されているそうですので、ぜひチェックしてみてください。

『メリエム』のプロダクションアシスタント・Meryem Dipdereさん(右)。本作のReber dosky監督は、現在シリアから逃れて難民キャンプで暮らす人々を撮影しているそうです。

 

 

台湾・高雄映画祭プログラム

今年3回目となる高雄映画祭のプログラムには、同映画祭のプロジェクトコーディネーターと、2作品から監督・プロデューサーが登場してくれました。

 

『独奏』は、”天才ピアニスト”と”障害児”という対極の二人を息子に持つ母親の葛藤が描かれた作品。三人が久しぶりに再会するコンサート会場で、かつて一つだった家族が、時を経て大きく隔たってしまった現実が浮かび上がってきます。「ストーリーはフィクションですが、描かれた感情は自身の経験に基づいた真実です」とBang-Yao, Liu監督。物語映画をつくるのは初めてということもあり、キャスティングにもこだわったそうで、台湾で有名な実力派俳優たちが出演しているそうです。

『独奏』のBang-Yao, Liu監督。高雄映画祭に出品した脚本が評価されて、この作品の制作費が捻出できたとのこと。

 

タイトルからして興味を惹かれる『男とサルとマネキンと』は、年を重ねるにつれ、現代生活との接点を失ってしまった孤独な時計店主の物語。友人が死に、心配してくれる娘には頑固に振舞ってしまう日々の中で、彼の心に変化をもたらすのは、意外にも、サルとマネキンだった・・・というユニークなストーリーです。

Dan-chi HUANG監督は、ご自身のお祖母さんも引きこもりになっていたりと、台湾も高齢化社会が深刻であるという状況を教えてくれました。と同時に、この問題が社会的にあまり真剣に考えられていないと感じたので、映画にすることにしたといいます。主役の時計店主を演じる存在感のある俳優は、「演技力があり、頑固な表情を作れる人」という条件でキャスティングした、なんと台湾テレビ界の大スター。Hsin-fu TSAI プロデューサーは、資金は映画祭のファウンディングで集め、制作に1ヵ月半、撮影には10日間かかったことを教えてくれました。

『男とサルとマネキンと』のDan-chi HUANG監督。作品の重要なアイテムとなるチャールズ・ブロンソン似のマネキンは、高雄に実在する洋品店のものだそう。

 

高雄映画祭のプロジェクトコーディネーター・Hui-Ting Tsaiさん。学校での上映会や、親子で映画を見る企画など、主に映画を教育に役立てるプロジェクトを行っているそうです。

 

ミュージックプログラム

人気インディーズバンド・リアクションザブッタの最新ミニアルバムに含まれる6曲の楽曲を元につくられたドラマ仕立てのMV『After drama』。若者のリアルな恋愛模様が、楽曲の歌詞や登場人物のセリフを通じて、時に爽快に、時に切なく胸に迫ります。

この作品を手がけたのは、なんと昨日のスペシャルイベントにも登場していただいた“チーム万力”の清水康彦監督。実はこの企画、バンドメンバーの呼びかけで、クラウドファウンディングによって資金が集められたといいます。”別れと出会いと別れ”を描いたストーリーは、バンドメンバーたちと、楽曲の歌詞に込められた恋愛観についてディスカッションしながらつくっていったそうです。撮影期間は、1日半くらいで、劇中のライブシーンは撮影用にセッティングしたのではなく、実際のライブ会場に潜入して撮っていったとのこと。安室奈美恵や桑田佳祐、コーネリアスからシーナ&ザ・ロケッツまで数々の名作MVを手がける清水監督は、MVとショートフィルムの共通性を強く感じているとおっしゃっていました。

『After drama』の清水康彦監督。ミュージシャンから、MVをショートフィルムとしてできないかという依頼も多いそうで、現在も脚本を製作中とのこと。

 

 

いかがでしたか?

映画祭は、6/24(日)まで開催しています。笑顔のボランティアスタッフが皆様のお越しを心よりお待ちしています!

Written and photo by チバアキフミ