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【レポート】ボスニア紛争下、小さな市民の闘いを描いたショートフィルム『水になる雪』

2019/06/03

【レポート】ボスニア紛争下、小さな市民の闘いを描いたショートフィルム『水になる雪』

6月1日(土)、二子玉川会場にて「戦争と生きる力プログラム supported by 赤十字国際委員会」の上映が行われました。

世界各地では今この時も、戦争やさまざまな暴力が多くの人の人生を狂わせ、愛する人や平和な日常を奪っています。平和な日本に暮らす私たちが、プログラムの作品に登場するさまざまな境遇の人たちの人生や想いに触れることで、身近な人を思いやり、助け合うことの大切さを感じてもらいたい———という想いで赤十字国際委員会のご協力の下、映画祭ではこのプログラムを4年前から皆様にお届けしています。

この日は土曜日ということもあり、二子玉川はたくさんの買い物客や家族連れでにぎわっていました。上映会場にもたくさんの方にご来場をいただきました。上映したのは、「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字」のうち、「プログラム1」のボスニア、フランス、ウクライナ、クロアチア、イギリス、ドイツ、フィンランドの7つの作品です。

上映終了後、『水になる雪』のChristopher Villiers監督の質疑応答が行われました。

【あらすじ】
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中に包囲されていたサラエボでの実話。市内に暮らす二人の子供は、父親に頼まれて雪をかき集めてはひたすら浴槽に溜めている。水を得るため、子供たちは遠くから飛んでくる大砲やスナイパーの銃撃に負けじと、必死に父親からの言いつけを守ろうとする。

まず、監督は「初めて日本に来ました。日本の皆さんに作品をご覧いただく貴重な機会をいただけて光栄です。また、いま観た7つの作品はどれもすばらしかったです」と挨拶されました。

早速、観客からも質問の手があがりました。ある男性は「胸を締め付けられるような映像でした。二つ質問があります。なぜ、セルビア軍は非戦闘員の一般人を襲っていたのでしょうか?また、今のサラエボの状況はどうなっていますでしょうか?」と質問されました。

それに対して、Villiers監督はブリティッシュ訛りの英語(作品の制作国はボスニアですが、監督本人はイギリス人)でボスニア紛争について語りました。

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昔、ユーゴスラビア連邦という国がありました。連邦を構成するボスニアという国のサラエボという街は、イスラム教徒、キリスト教徒、ロシア正教徒、ユダヤ教徒が住み、宝石の街といわれるほど、多くの民族、宗教、文化があり、ユーゴスラビアの中心だったわけです。

しかし、そのユーゴスラビアが、5~6つくらいの小さな国に分けられたとき、セルビア軍が自分達の領土を拡大するため、ボスニアに侵攻しイスラム系の住民達を殺しをはじめたのです。いわゆる民族浄化でした。

その宝石の街が、近代においても稀な4年間という長い期間、地獄になった訳です。地形的に、サラエボは渓谷の底にある街なので、周りを包囲したセルビア軍による容赦ない銃撃、狙撃、爆撃が続きました。彼らは水、ガス、電気などインフラを破壊し、川には毒を流しました。隠れる住民達も木を切って家の中で暖をとり、木がなくなれば、家具を、家具がなくなれば、本を、本がなくなれば靴を燃やして生活しました。これがたった25年前の話です。

来年、東京でオリンピック&パラリンピックが始まりますね。この大会は人類を祝するものです。1982年、冬季オリンピックがサラエボで行われた時、私はロンドンで大会をみていました。その10年後、彼らは殺しあうことになるなんて誰が想像したでしょうか?

今のサラエボは近代的です。東京のようにコンクリートの建物、高層ビルも多く建っています。ただ、戦争の傷跡を忘れないため、壁に銃弾の穴が空いている建物も見ることができます。また、道には砲弾によって穴が開いている部分が各所にあり、それらの穴に赤のペンキを塗り、「サラエボのバラ」と呼んでいます。

7年ほど前、私が俳優として参加した作品の関係で、サラエボの映画祭に行きました。若いボスニア人のボランティアとカフェでコーヒーを飲んでいたときのことです。彼女に、戦争中はボスニアにいたのか聞いたところ6~10歳までの期間、戦争を体験したとのことでした。その時の一番の記憶、思い出を聞いたところ、父親に呼ばれて弟と一緒に雪をかき集めてこい、と言われたことだったそうです。今でもボスニアでは戦争のトラウマに苦しんでいるひとは大勢います。

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2番目の質問では、小学生くらいの女の子が手をあげVilliers監督に「なぜ、このドラマを作ろうと思ったのですか?」と問いかけました。監督は和やかな笑みを浮かべて答えました。

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私の姉は、映画業界でも実績をあげた女性プロデューサーで、オスカー(注)も受賞した経歴があります。そんな姉から「あなたいつも映画監督になるって話しているけど、いつ撮るの?」と聞かれたことがありました。そして、「もし、あなたが映画を撮るのであれば、自分のコンフォート・ゾーン(自分の居心地のいい場所)から出て、何か勇気ある、非凡で真実を問う映画を作りなさい」と言われたのです。
その時に、雪の話を思い出しました。そして、私はクレージーにも、マイナス25度の場所で、50センチくらいある雪に囲まれ、話す言語もわからず、二人の子役と仕事をすることになったのです。ですが、作らなければならない作品でした。

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質疑応答が終わると観客から大きな拍手があがり、Villiers監督も満足そうな表情でした。
同じイギリス人俳優だったロジャー・ムーアを彷彿する顔立ちで、今後も俳優、映画監督としての活躍を期待しています。

この「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字 1 」は、6月7日(金)表参道ヒルズ スペースオー会場にて15:40の回でご覧いただけます。ぜひ、大きなスクリーンで作品をご鑑賞ください。

また、オンライン会場では「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字」から4つの作品が視聴できますので、そちらもぜひ、チェックしてみてください!
https://www.shortshorts.org/2019/ja/online/online_wp.php

注:
映画『ノー・マンズ・ランド』。2001年のボスニア・ヘルツェゴビナの戦争コメディ映画。 監督はダニス・タノヴィッチ。第74回(2002)アカデミー賞外国語映画賞を受賞。
(因みに「水になる雪」で姉弟を演じていた二人の子役は、タノヴィッチ監督の実子)

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