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【動画・書き起こし配信】6月7日(日)の東南アジア シンポジウムPart4



以前のトピックは以下から
トピック1 映画産業全体からみた、東南アジア各国におけるショートフィルムの位置づけはこちらから
トピック2 各国におけるショートフィルム制作の状況はこちらから
トピック3 各国での若手映像作家の育成状況はこちらから

シンポジウム「東南アジアのショートフィルムの現状と展望」
開催日時:2015年6月7日(日)
開催場所:表参道ヒルズ スペース オー
第4動画トピック:未来に向けた共通課題とその解決

パネリスト:
ヨセプ・アンギ・ノエン監督(インドネシア:映画監督/プロデューサー)
チェア・ソピアップ氏(カンボジア:ボパナ視聴覚リソースセンター 副所長)
デレック・タン氏(シンガポール:「Viddsee.com」共同創設者)
アーティッドサイ・ボーンダーオファン氏(ラオス:「DOKLAOセンター」代表/「Lao New Wave Cinema Production」共同設立者、プロデューサー)

150607_0081ヨセプ・アンギ・ノエン監督:FEMISに関しては書類と過去の作品で審査が行われます。また 面接では、先生を魅了することが重要です。
正確な情報は知りませんが、外国人の学生が増えているのは事実です。また ラ・フレノアという実験的な映像を得意とする学校があります。そこには すでに映画業界で経験のある監督などが、改めて学ぶために 集まります。
FEMISに話を戻すと 演出だけでなく音響や撮影など技術を学ぶ学部があります。映画制作における能力を確立するほかに重要なことが1つあります。それは人々が映画を観る機会を増やすことです。私たち映画制作者は映画を作るだけでなく人々の興味を映画へと引きつけることも必要です。カンボジアやベトナムラオスの映画への興味です。必要なのは私が問題だと思うのは、隣の国で何が起きているか知らないことです。自分たちの家は最高だと誰もが夢を見ているのだと思います。デレックさんが設立されたViddseeはすばらしい映像プラットフォームです。アジアの映画をワンクリックで視聴できます。非常に優れたサイトだと思います。しかし インドネシアでは、ネット環境が不十分な上にVimeoも視聴できません。性的なコンテンツを理由に政府が規制しているからです。それでも ラッキーなことにYouTubeやViddseeは視聴が可能です。ネット環境が十分に整っていないのでこういったプラットフォームは大切です。東南アジアだけでなくアジア全域の映画祭で使われることもあります。例えばインドネシアから各国へ作品を送ることができれば共同企画が可能です。ジャカルタの映画祭ではよくあることです。出品される作品の中にはマレーシアやシンガポールのものもあります。しかし インドネシアでは、ラオスの映画を観る機会はほとんどありません。それも今後は改善されるでしょう。

150607_0093チェア・ソピアップ氏:質問に対していいコメントができるか分かりませんがカンボジアでの経験から話をしたいと思います。それがいいことかどうか分かりませんが、カンボジアには映画学校がありません。だから新人の映画制作者は短編映画 長編映画に関わらず、実際に撮影することから始めるのです。1960年から1970年代のカンボジアを振り返ってみると、有名な作品を作った監督が大勢いました。彼らは学校に行っていません。例えば リー・ブン・イム監督は自分の薬局を売り、16ミリフィルムを購入して撮影を開始しました。彼の持つスキルは写真の現像だったのでその経験を映画作りに生かしたのです。カンボジアの現在の状況に話を戻すと、ワークショップに参加する人が増えています。ボパナセンターやNGOといった組織が小規模なワークショップを主催しているのです。いわば練習の場です。みんな情熱と愛を持っています。どちらも大切なもので、映画制作の原動力になります。もう1つ重要なことは情報交換です。映画制作者や映画好きな人たちが意見を交換したり、シンガポールやインドネシアなど他国の映画を観ることです。現在のカンボジアではネット環境が整っているのであらゆるサイトが視聴でき規制はありません。この状況は カンボジアにおける短編映画の成長が爆発的に進んでいるからだと思います。
また 他に気がついた点をあげるとしたら、テクノロジーの進歩による恩恵です。誰もが小型のデジカメで撮影ができフリーの編集ソフトも手に入ります。そういった低品質のソフトを使い短編映画を作るのです。ただ 裏を返せば他に方法がないのです。だから他国との交流が増えればいいと思います。映画産業の進んだ国からは、学べることも多くお互いの国の短編映画の発展にもつながります。レベルは違っても確実に前進します。以上です。
150607_0101デレック・タン氏:私も観客の成長がカギだと言うヨセプ監督の意見に賛成です。映画制作者に対する支援は、たくさんあると思います。脚本作りのための助成金が提供されたり、作品を上映する機会として映画祭が開催されています。しかし観客の成長を促す試みは多くありません。またシンガポールの映画は埋もれています。映画館で上映されるのはハリウッド映画だけで、自国の映画は注目されませんアジア映画全体について言えるのは、自国の映画を普及させる努力が必要だということです。アジア各国が独自の物語を世界に発信するのです。私が作った映像プラットフォームで作品を配信できます。そうすれば それぞれの国の物語を知ることができます。映画を取り巻くシステムにとって、大きなカギとなるのは、あまり注目されていませんが観客を育てることです。ヒットしたハリウッド映画の続編だけが娯楽作品ではありません。アジアの物語を伝えるすばらしい映画がありそういった作品を
もっと普及させるべきです。シンガポールでは、映画学校に入学してから映画制作に関わっていきます。地元にある別の映画学校と協力することもあります。それぞれの映画学校には、映像コレクションがあります。学生が観ることができるのは自分の学校にある作品だけです。そこで 他校のコレクションも利用できるようにすると、
生徒同士の交流が生まれました。私には別の映画学校を卒業して活躍している仲間もいます。ただ 国の中だけの話です。今後は その範囲を海外にも広げる予定です。それが実現すれば 例えば“ラオスで映画制作は無理”そんな言い訳は通用しません。資材が不足していても映画を制作している国もあります。また 世界に発信することが原動力にもなります。短編映画を作っているのはプロではなく学生です。限られた資材を使って質の高い作品を生み出しています。繰り返しになりますが国同士がつながることそれが重要だと思います。インターネットを使えば可能です。とは言え オフラインも大切です。その一例としてシンガポール国際映画祭は、東南アジアの映画制作者たちの交流の場です。映画やテレビの制作者が直接 顔を合わせます。私が映画学校の学生だった頃アジア映画シンポジウムがありました。しかし 最近は開催されていないので、再び開催されることを願っています。以上が私の考えです。
150607_0112アーティッドサイ・ボーンダーオファン氏:どうも最初にお話したいのは、ラオスでは映画作りはまだ始まったばかりです。短編映画だろうが長編映画だろうが新しい産業です。だから 私たちには友人が必要です。ラオスに来て指導したり経験をシェアすることで手助けをしてほしいのです。国に来てもらって、映画を一緒に作ることは私たちにとって重要です。制作やスキルの観点からも友人を必要としています。またさらに映画の配信に関して言えばラオスでも、インターネットが使えますFacebookやYouTubeなどで視聴できますが、使える人は少数です。ネット環境が整っているのは、都会だけだからです。では 郊外に住む人たちはどうでしょう?誰もがネットを使える環境には、程遠い状態です。そこで 私たちが思いついた方法があります。“移動式上映会”と呼んでいます。首都ビエンチャンで映画祭を行った後作品を持って、郊外へ移動するのです。そこで上映すれば、みんなが鑑賞できます。私たちが上映する映画で大切にしていることがあります。ラオスの観客にひらめきを与えることです。新しいことを始めるきっかけです。映画は非常に多くの物語を伝えています。多くのトピックを含む映画は国を発展させる手段です。また私たちが目指すのは、市民レベルから国家レベルまで感情を揺さぶる作品を作ることです。近い将来 テクノロジー機器は価格がさらに下がり、誰もが手に入れられるようになるでしょう。そうなれば世界に伝える最高の手段となります。“ラオスにも映画産業があります”ラオスに来て一緒に映画を作りましょう”とそれが世界にラオスを見てもらう唯一の方法だと思います。

【動画・書き起こし配信】6月7日(日)の東南アジア シンポジウムPart3



シンポジウム「東南アジアのショートフィルムの現状と展望」
開催日時:2015年6月7日(日)
開催場所:表参道ヒルズ スペース オー
第3動画トピック:各国での若手映像作家の育成状況

パネリスト:
マリー・イレーン・リウ氏(ケベック、カナダ:サグネ国際短編映画祭 ショートフィルム選考員 / ショートフィルムマーケットディレクター)
ベルトラン・ルーシ氏(フランス:クレルモンフェラン国際短編映画祭子供プログラム統括)

ベルトラン・ルーシ氏:みなさん こんにちは映画祭そしてアジアセンターの皆様に感謝いたします。フランスにはいくつかの映画教育が存在します。
その一つとして観客を育てるということがあります。それは子供の頃から 映画を鑑賞し議論する機会を与えるのです。それを“映像教育”と呼んでいます。国の管轄で行われるこの教育で子供たちは 受容的に映画を観るだけではなく、映画から何かを発見したり 映画の中で何が描かれているかを考えることになるのです。そのような教育を受けた子供たちがやがて高校生や 大学生になった時映画を楽しむだけでなく 制作に興味を持ち映画制作を学ぶ道に進むのです。
フランスには いくつかの有名な映画学校が存在します。最も有名なのはフランス国立映画学校ですがそれ以外にもアニメーション専門学校などがあります。そういった映画学校は 人気が高く入学希望者も殺到します。しかし それでも映画制作を学びたい若者は私立の映画学校などにも進みます。そういった映画制作を志す若者の数が増えることで、制作される作品の数も増加し映画祭で紹介されるフランス作品も増えています。私のような映画祭としても彼らの存在は非常に重要です。それは彼らが映画の未来を担う存在であるからです。

150607_0140私たちは 若い映画監督が自主制作した作品を、インターネット上で発見するということも行っています。そのような環境はアジアの国々とも似ていると言えます。映画は学校で学ぶようなテクニックだけではありません。ストーリーや 監督が何を伝えたいのかということも大事だと言えます。そういったインターネット社会が与えてくれる新たな出会いを 私たちは非常に大切にしています。先ほど挙げた FEMISには 最近
外国からの留学生が増えています。異なる世界感を感じることが可能な国を越えた共同制作なども非常に興味深いと言えるでしょう。


マリー・イレーン・リウ氏:〈こんにちは〉ケベック州だけではなく、カナダ全体やアメリカも同じ状況だと思います。優秀な映画学校があり映画制作者も多く学生が制作した短編映画を観ることもあります。フランスの状況にも少し似ています。入学希望者は多いものの学校が遠かったり、通学手段がない人も大勢います。学校は映画制作を始めるには最適ですが唯一の方法ではありません。
もちろん映画学校にはいくつかの利点があります。まず 予算がなくても学校の撮影用機材を使用できます。私も映画学校へ行ったのでその利点を活用しました。さらに映画制作に対して情熱を持つ仲間が集まるので、人脈作りの機会が豊富です。いい仲間と出会えば映画制作の励みにもなります。学校へ行く利点はこの2つだと思います。だから若い人にはぜひ映画学校に行ってほしいと思います。カナダでも同じことが言えると思います。トロント モントリオール、バンクーバーそれぞれに映画学校があります。

150607_0160私の出身地のケベック州からも言えることがあります。映画制作のチャンスは学校以外にもあります。ワークショップへの参加です。助成金基金が提供する脚本作りのための企画があり、学校へ通っていなくても参加の申請ができます。最近は多くの人にとって映画作りが身近になりました。スマートフォンで誰でも撮影できるので、今後の課題はストーリー作りです。こういったワークショップでは、10人ぐらいで脚本について話し合います。これは お互いのスキル向上に役立ちます。カナダではこういった企画が映画制作者にとって脚本作りの練習になります。実際に映画になる脚本も多いのです。また 専門家に自分の脚本を見てもらうことで、スキルの向上にも大いに役立ちます。だから たとえ映画学校へ行けなくても、何らかの機会があります。
映画学校以外の選択肢として“キノ”と呼ばれる企画があります。自発的なプロダクションです。100人ほどの映画制作者やアーティストが集まり、48時間 あるいは3日間で映画を作るのです。予算はありませんが機材が提供されることもあります。集まった人たちでチームを作りいい作品を作るために全力を尽くすのです。資金はなくても情熱と愛があります。多くのことを学べ上達するきっかけにもなります。モントリオールでは毎月短編映画を配信しているので、自分たちで作った作品を発表する機会もあります。このように2つの選択肢があります。
もちろん学生の映画を観る時と同じようにこういった短編映画を観ています。最近の短編映画について言えることがあります。学生の映画と資金提供された映画との差がなくなってきました。つまり 学生の作品レベルが
向上しているのです。また カナダやアメリカでは、学生の映画限定の映画祭があります。私たちにとっても
学生の作品だけを観ることができるいい機会です。私たちの映画祭にも学生向けのプログラムがあります。ただ 通常の作品と同じレベルを求めています。映画学校へ通うという利点を証明するためです。
以上です。

【動画・書き起こし配信】6月7日(日)の東南アジア シンポジウムPart2



シンポジウム「東南アジアのショートフィルムの現状と展望」
開催日時:2015年6月7日(日)
開催場所:表参道ヒルズ スペース オー
第2動画トピック:各国におけるショートフィルム制作の状況

パネリスト:
ヨセプ・アンギ・ノエン監督(インドネシア:映画監督/プロデューサー)
チェア・ソピアップ氏(カンボジア:ボパナ視聴覚リソースセンター 副所長)
デレック・タン氏(シンガポール:「Viddsee.com」共同創設者)
アーティッドサイ・ボーンダーオファン氏(ラオス:「DOKLAOセンター」代表/「Lao New Wave Cinema Production」共同設立者、プロデューサー)

ヨセプ・アンギ・ノエン監督:今のインドネシアの映画監督は恵まれています。政府が短編映画に関心を持つようになりました。私はジョグジャカルタという小さな街に住んでいます。首都のジャカルタから飛行機で、1時間程度の所です。私が住む街では政府が短編映画制作を推進し1作品につき1万ドルの、制作資金を提供しています。この制度により、1年に14から20の作品が制作資金を得ています。    この制度は何年も前から実施されてきましたが、公募ではありませんでした。政府関係者と関わりがないと、申請できなかったのです。この事実に対し 私や友人たちが怒りの声をあげました。“長年 映画を撮ってきた我々こそ支援を受けるべきだ”と。すると幸運なことに政府が私たちの声に理解を示してくれました。私たちに作品を見る目があると気づいたのです。そして、どの監督の作品が支援に値するのか審査に協力してほしいと言ってきたのです。第一にジョグジャカルタの文化や社会を伝えられる物語か否か、第二に監督が物語を映像でうまく表現できているか。審査することになりました。現在 私は審査委員会のメンバーとして若い監督たちを支援しています。私も若いですが、彼らはもっと若いです。審査に通れば

150607_0081彼らは制作資金を得られます。1作品に1万ドルという予算は、短編映画としては、非常に高額です。私が撮った作品が、後ほど上映されますが、とても少ない予算で作りました。1000ドル程度だったと思います。映画制作のための資金を調達するには、もう1つの方法があります。NGOのために短編映画を、制作するという方法です。NGOは様々な、社会問題に取り組んでいます。例えば 人権 女性や子ども医療などです。NGOが取り組むこれらの課題を主題にして、物語を作るのです。それによりNGOから、資金を調達できます。私について言えばメディアと貧困について、映画を制作しています。得た資金の半分でNGOのための作品を撮り、残りの半分で自分が作りたい作品を撮るのです。こうして私たちは映画を撮り続けています。他にもシャンプーやミネラルウォーターなど商品をテーマに、作品を撮ることもあります。企業が著名な監督に依頼して短編映画を制作するのです。そうすれば商品の宣伝になります。レクサスやBMWも同様のことをしています。以上が私の国の状況です。

チェア・ソピアップ氏:どうも昨今 カンボジアでは、短編映画が以前より盛んに制作されています。インドネシアやシンガポールに比べたら多くはありませんが数年前よりは増えています。つまり我が国の短編映画の多くはここ3年の間に作られたのです。作品は情熱と愛と少しの予算で作られましたが、情熱と愛はいつまで続くでしょう。私にも分かりません。我が国の短編映画監督にはポーラン・リーやソムチャンリット・チャップなどがいます。先ほど上映された作品も含め、いずれの監督も低予算で映画を制作しています。彼らは友達や家族から集めたお金で作品を作っています。これがカンボジアの現状です。先ほど1作品の予算が、1万ドルという話がありましたが、若い監督たちは300から400ドルで作品を作っています。トロップフェスト短編映画祭で入賞したポーラン・リーはクラウドファンディングで1800ドルを調達しました。このような事例もあります。

 

150607_0093他にも資金調達に関して、よく気が回る映画制作者もいます。彼らはNGOに提案書を出しています。カンボジアのNGOは、福祉サービスの提供など社会問題を解決するための様々な活動を行っています。NGOの活動に即した映画を作れば資金を得られます。クラウドファンディングをする者もいますが、やり方を知っているのはごく少数です。それから私たちは若い監督たちを支援するためワークショップを行ったり、機材を提供したりしています。ボパナセンターとカンボジア・フィルム・コミッションは、リティ・パンによって設立された組織です。2つの組織は我が国の映画産業の発展のために作られました。また私たちは若き新人監督の活動を支援するためコンサルティングも行っています。映画制作のノウハウを指導しているのです。他にも作品を発表する場を提供するため、カンボジア国際映画祭を毎年12月上旬に開催しています。昨年はショートショートフィルムフェスティバルの作品を数作 上映しました。今年はもっと上映したいです。そうすれば我が国の若い監督のよい成長の機会になると共に国内で短編映画を広めるよい機会になると思います。以上です。

 

デレック・タン氏:シンガポールでは多くの監督が学校から排出されています。ここ10年で映画学校がいくつか設立されたので映画監督を育成する環境は整っています。資金調達について言えば機材は学校から借りられるのでその分多くの予算が節約できます。加えて政府の助成金もあります。シンガポール映画委員会が短編映画助成金だけでなく、最近は長編映画向けの助成金も提供しています。また今年はシンガポールの独立50周年なので多くの機関がお金を出して映画制作を委託しています。先ほど東南アジアプログラムで上映されたサン・コーの作品も国の委託で作られました。この作品は退職した高齢者たちが残りの人生を有意義に生きることを奨励するために作られました。

 

150607_0101広告でも面白い変化が起きています。先ほどヨセプ監督が車の宣伝の話をしていましたが、広告が商品の紹介から物語に進化していると思います。企業が映画監督と協力して物語を紡ぐようになったのです。このようにシンガポールには資金調達の機会が豊富にあります。もう1つ シンガポールの特徴として言えるのは、国民の大多数が中流層だという点です。可処分所得があるということです。だから監督たちは私財を投じて映画を作れるのです。フィリピンやマレーシアも同様です。経済成長しているということは収入が増えている人が一定数いるということです。収入が増えれば映画を作るお金を出せるようになるのです。カンボジアやラオスでも同じことが起こると思います。

アーティッドサイ・ボーンダーオファン氏:ラオスでは私たちは今 仕事で映画祭を開催しています。映画祭を行うことでラオスの監督が作品や考えを発表する場を提供しています。監督は自分がいいと思うものを発表し、人々の反応を見ることができます。しかしラオスの映画監督にとって問題なのは、学校がないということ、それから他国のように十分な収入がないということです。ラオス政府はようやく映画産業に目を向け始めたばかりです。映画や演劇などといったメディア産業が国の成長に役立つと気づいたばかりなのです。このため少しは国から支援が受けられますが、まだ政府の規制下にあります。自由ではないのです。

 

150607_0112それから資金調達について私の経験からお話しします。私は友達と一緒に映画制作を始めました。映画製作会社を設立した他、メディア教育にも携わっています。私は映画を作る時は友達とお金を出し合ってきました。今でもなお状況は変わりません。長編も短編も自費で制作しています。政府には映画制作を支援する資金がありません。商品の販売促進や広告のための企業からの出資も見込めません。ほとんどのラオス人はタイの映画を見るので、タイの映画監督に出資した方が効率的なのです。なぜなら600万人のラオス国民に容易に広告が届けられるからです。このため私たちが資金を得るのは非常に困難なのです。だから自費で制作するしかありません。私の場合は家族に頼んでお金を貸してもらっています。返せませんが初めて映画を撮った時は長編映画でしたが1万ドルほどかかりました。まずは制作メンバーの10人でお互いに持っているお金を出し合いました。足りなくなれば両親から借りました。すると両親は“5年後に返してね”と言ってお金を出してくれたんです。最近の若い監督たちも私たちと全く同じことをしています。友達と集まって持っているお金を出し合い、制作費に加え食費や交通費も賄っています。これがラオスの現状です。だからラオスの映画産業はなかなか成長しないのです。誰からも支援を受けられませんし、若い人たちは映画制作でお金は稼げないと考えています。ラオスの産業と呼ぶには程遠い状態です。映画を作れる者が情熱と愛と信じる心を持って映画を制作し始めたという状況なのです。

 

【動画・書き起こし配信】6月7日(日)の東南アジア シンポジウムPart1



シンポジウム「東南アジアのショートフィルムの現状と展望」
開催日時:2015年6月7日(日)
開催場所:表参道ヒルズ スペース オー
第1動画トピック:映画産業全体からみた、東南アジア各国におけるショートフィルムの位置づけ

パネリスト:
ヨセプ・アンギ・ノエン監督(インドネシア:映画監督/プロデューサー)
チェア・ソピアップ氏(カンボジア:ボパナ視聴覚リソースセンター 副所長)
デレック・タン氏(シンガポール:「Viddsee.com」共同創設者)
アーティッドサイ・ボーンダーオファン氏(ラオス:「DOKLAOセンター」代表/「Lao New Wave Cinema Production」共同設立者、プロデューサー)

 

ヨセプ・アンギ・ノエン監督:インドネシアの短編映画を語る機会に感謝します。インドネシアの短編映画は技術革新のおかげで進歩しています。皆さんもご存じのとおり今はデジタル機器や小型カメラを使うことで手軽に映画が作れます。スハルト政権の後 改革が起こり映画産業も変化しました。新しい改革の時代へと大きく変わったのです。人々に表現する手段が生まれました。表現するのは自分自身の考えだったり芸術的な意見といったものです。テクノロジーを使うことで社会に対する自分の意見を伝えられるのです。つまり短編映画を通して芸術家としての意見を表現できるのです。短編映画を制作する理由はまず低コストだからです。

150607_00812000年初期から小型カメラで映画を作ってきました。日本のメーカーのビデオカメラで撮影して短編映画を作り、完成した作品を国内の映画祭に出品するのです。映画祭はジャカルタやジョグジャカルタ、バンドゥンで開催されています。インドネシアの文化の中心です。しかし現実にも直面しています。制作される短編映画の数は増えていますが作品の質は高いとは言えません。と言うのも 急速に発展したテクノロジーに反応しているだけだからです。それはつまり技術革新のおかげでデジタル機器が身近になったから映画を作っているだけなのです。そのため作品の質は低くストーリーもよくなくメッセージ性も含まれていません。社会に対する批判などです。それだけではありません。個人的なことを表現するためだけに映画を作る人もいます。悪くはありませんが、多くの人の心には響きません。だからインドネシアの映画制作には新しい課題があります。それは作品の質の向上です。

長編映画の産業では変化が起こっています。デジタル時代になり映画の制作にかかるコストがどんどん低くなっているからです。現在 長編映画の数は多く毎年100本以上の作品が作られています。しかし良質な作品はそのうちの2割に過ぎません。残りの8割の長編映画に関して言えば、完成度は高くありません。それは映画産業全体について言えることです。
しかし、たとえ作品の質があまりよくなくても、人々は映画を観に来てくれます。一方 短編映画の方は私の経験から言えることがあります。それは、長編映画に比べ制作費がさらに安いことです。

また、若手の映画制作者にとってはコミュニティーを作る手段でもあります。仲間が集まれば、さらに作品が生まれます。技術革新の影響は、小さな町にも及びます。ジョグジャカルタや、マカッサルなどの離れた島でも映画の制作がより身近なものになりました。テクノロジーを使って自分たちで短編映画を作り現実や社会状況に対する考えを伝えるのですしかし規模は大きくありません。インドネシアにおける短編映画は、映画産業へ参入するための最初のステップです。インドネシアの短編映画は産業としてまだ確立されていません。長編映画とは違います。短編映画の第一の目的は表現することと言えます。第二の目的は映画産業へ参入するための足掛かりです。ここでいう産業とは長編映画です。2つの目的がありますが、表現は単なる表現に過ぎず。質が不足しています。しかし 長編映画への参入を目指す人にとっては、短編映画の制作は、別の意味もあります。映像機器を使ってできる表現を追求することです。ストーリーでもなく短編映画で表現できる本質の追求でもありません。映画産業全体が質の高い物語を伝えられていないからです。だから若手の映画制作者には大きな課題があります。映画を量産するデジタル時代の現状からインドネシアの映画産業を質重視へと変えていくことです。以上がインドネシアの短編映画の現状です。

チェア・ソピアップ氏:カンボジアの映画事情を紹介する機会に感謝します。

またノエン監督のお話にも感謝します。カンボジアの映画産業が再始動したのは約5年前で長編映画の監督はあまり多くいません。私たちのような若手には長編映画を制作するための資金調達が困難だからです。今のところ短編映画だけが自分たちを表現する手段でその制作過程でチーム作業など多くのことを学びます。そのためカンボジアでは長編映画に比べ短編映画の方がはるかに多いのです。短編映画の制作は学校のようなもので共同作業を通して学ぶことがたくさんあります。低コストでよい作品を作る勉強にもなります。私たちには将来の目標があります。短編映画で実績を作り長編映画制作のチャンスをつかむことです。

150607_0093短編映画の制作は映画産業と技術の発展の一部です。また国外に自分を売り込む手段です。数年以内に多くのカンボジアの短編映画制作者の名が東南アジアに広まるでしょう。カンボジアの短編映画は成長していると思います。2012年以降 いくつかの映画祭が開催され始めました。チャトモック・ショートフィルム・コンテストやボパナセンターでのカンボジア国際映画祭カンボジア・フィルム・コミッションカンボジア以外の地域の短編映画も企画しました。実際のところ一般に公開する目的で作られました。

短編映画の題材は全般的にとても面白いと思います。例えば ご存じかもしれませんが「Colorful Knots」や「握りしめた石ころ/A Fistful of Pebbles」後者は今回の映画祭に出品されている作品です。どちらの映画も興味深い題材が使われ、特定のジャンルに分類できません。短編映画の制作は、社会について発言する手段です。現在のカンボジアのテレビはテレビだけでなく映画の内容にはメッセージ性がほとんどありません。だからこそ今の若者は表現の手段として短編映画を作り自国の物語を伝えるのです。若手の映画制作者にとって短編映画だけが現状を伝える手段なのです。しかしカンボジアの短編映画はまだ小規模です。多くの独立系映画制作者がデジカメを片手に通りで撮影しているだけです。独立系の映画は検閲がそれほど厳しくありません。カンボジアの長編映画と比較するとよく分かります。現在のカンボジアでは短編映画産業はまだ とても小規模なものです。以上です

 

デレック・タン氏:こんにちはまず東南アジア全体についてお話ししたいと思います。

そこには多くの国々が含まれています。また全体の現在の人口は非常に多く、経済的に成長しています。携帯電話の普及率はデスクトップPCに比べ100パーセント以上です。そのため多くの人たちが初心者でも携帯を使って何かを表現しています。また 携帯所有者の7割が携帯で動画を見ていることは、非常に興味深いことだと思います。東南アジア全体では動画に触れる機会が多くそれは短編映画に限りません。ネットの動画共有サービスで自作の動画を公開する人が増えているからです。しかし シンガポールに関しては、多くの短編映画をネットで視聴することができます。先ほどノエン監督が技術革新の話をされていましたが、映像機器のコストが下がり性能も向上しています。また作品をネットで世界中に配信でき視聴者と直接交流することも可能です。同時にシンガポールでの知名度が上がれば、短編映画制作の依頼も増えます。また2015年はシンガポールの独立50周年なのでほぼ毎週オンラインで短編映画を観ることができます。短編映画は物語を伝えるメディアです。

150607_0101面白いことにシンガポールでは短編映画は、インターネットのための映画のようなものです。インターネットの普及で独自に発展したのです。私自身 映画制作者という創造的な立場で、マレーシアやフィリピンの制作者たちと交流してきました。その際に感じたのはメディアが規制されてきた中で短編映画は間違いなく表現手段だということです。シンガポールでは自由に議論できない話題があります。もちろん主要なメディアで議論される話題もあります。ただテレビ局も新聞社も各1社しかないのである程度 制限されています。だからこそ短編映画は私たちの表現手段なのです。

マレーシアについても同じことが言えると思います。マレーシアはイスラム教徒が多い国ですが中国の映画制作者が増えています。独立系映画を作ることで自身の見解を表現しているのです。短編映画の発展はメディア規制の影響が大きいと思います。短編映画制作者にとって自分たちの物語を広く伝える手段なのです。また短編映画は長編映画制作の最初の一歩です。例えばアンソニー・チェン監督はカンヌ映画祭で新人監督賞を受賞しました。

彼は10年間短編映画の制作に携わった後初の長編映画を手がけたのです。「イロイロ ぬくもりの記憶」は私たち短編映画制作者の間では有名です。自分のブランドを築いてから長編映画に飛び込むのです。フィリピンとマレーシアの映画制作者と一緒に働いた際彼らの短編映画を上映しました。すると観客からもっと見たいという要望が寄せられたのです。それを受け 長編を制作中です。その結果マレーシアの制作者は資金を得ました。短編映画は、長編映画への登竜門なのです。

以上です。

 

アーティッドサイ・ボーンダーオファン氏:サバイディ こんにちは映画祭に招待していただき感謝します。

私にとって初めての国際映画祭への参加となります。すでに3ヵ国の方々がお話しされましたが、アジアではどこも似たような状況だと思います。その理由として最新技術を使うことでコストを抑え簡単にできることが増えました。ただラオスの人々にとって1つ言えることがあります。映画産業は長い間忘れられた存在でした。その期間は1975年頃から2000年までの間です。その間に作られた映画は1つだけです。そして2000年になるとラオスの1つの企業が映画の制作を始めました。タイのプロダクションとの共同制作です。それがラオスの映画文化に再び息を吹き込んだのです。その後非常に多くの若手の映画制作者が現れました。若くない人もいますが、映画作りを独学で勉強して自分たちで映画制作を始めたのです。携帯電話で撮影から編集まで行いさらに動画共有サービスにアップするのです。そして社会に対する自分たちの考えを表現しています。

150607_0112新人にとって映画を制作する主な目的は、自分たちの独創的なアイデアを示すことです。ラオスの首都ビエンチャンの若者の間では、映画作りが流行っています。自分が作り出した作品が、ヒットして有名になることもあるのです。だからラオスの若者の多くが映画を作っています。ただ本気で取り組むわけではありません。“友達がやっているから”という感じです。また短編映画の制作には、別の目的もあります。私たちは短編映画の発展に力を注いでいますが、先ほどお話に出たように長編映画へ参入するためです。ラオスには現在若手の映画制作者が大勢いてその多くは優秀です。「父の手形/Father’s Handprint」はラオスの国際映画祭で最優秀賞を受賞しました。それは監督が初めて作った映画でした。

ラオスの映画産業は始まったばかりで映画の制作における資金もスキルも不足しています。また ラオスには映画の学校もないのでインターネットを活用して独学で学ぶしかありません。以前 インターネットで知り合ったタイの人たちとグループを作りました。映画制作に興味がある者同士で作品を作るためです。お互いの制作方法を共有して学ぶいい機会でした。また私たちは幸運にも資金を得られました。資金と言うよりは国からの支援です。そのおかげでタイやベトナム日本から映画制作者をラオスに招待できます。そしてワークショップを開催してラオスの映画産業の発展に役立てるのです。非常に勉強になります。以上です。

 

 

6月7日(日)の東南アジア シンポジウム/表参道ヒルズ スペース オー会場!

「東南アジアのショートフィルムの現状と展望」をテーマに、インドネシア、カンボジア、シンガポール、ラオスの映画製作者を招いてパネルディスカッションをおこないました。

東南アジアのショートフィルムの制作環境は、機材などの技術革新で急速に向上し、誰もが低予算で作品をつくれるようになったといいます。また、インターネットの普及で作品を発信できる環境も広がっているそうです。一方で、作品に大切なもうひとつの側面である“テーマ”や“ストーリー”といったソフト面のクオリティがまだ育っていないという課題があるとのこと。シンポジウム中盤では、本日のパネラーの一人である、インドネシアのヨセプ・アンギ・ノエン監督「ホールインワンを言わない女」を上映。

昨年のSSFF & ASIAでグランプリに輝き、審査員の北村龍平監督も大絶賛された作品です。実は、この作品の予算は、わずか1000ドルほど!低予算で高いレベルの作品をつくれるショートショートの可能性を見事に実現した作品だといえます。後半は、カナダのサグネ国際短編映画祭とフランスのフェラン国際短編映画祭からもパネラーが参加。歴史のある映画祭を実施している両国の取り組みに、東南アジアのパネラー一同、熱心に耳を傾けていました。「作り手の教育はもちろん、映画を観る観客の教育も、これからの文化発展のために大切だ」というヨセプ・アンギ・ノエン氏監督の言葉が印象的でした。