エリザベス・ロシェン
ロイ・アンガー
マーク・オズボーン
ケイス・ミルトン
クリス・ハーウッド&ブルース・ラフィ
エリザベスはフランス出身だが、1998年以降はロサンゼルスに住んでいる。「私がアメリカに来たのは、ここで映画が作られているから。私がくることで、映画にヨーロッパっぽさというか、ヨーロッパの感性や感情を出したかったから」と彼女は説明した。彼女は心理学の博士号を取得しているが、1989年には現在DTSとして知られるデジタル・サウンド・システムを友人とともに開発した。『レッド・リボン』は彼女にとって初めての短編作品であると同時に、監督デビュー作でもある。しかし舞台では、7歳のときに自分の舞台で監督を経験している。エリザベスの次回作は彼女自身が脚本を手がけ、民族の選別を扱った『Gen』というタイトルの長編スリラーで、彼女は監督を務める予定である。
『レッド・リボン』について
短編映画について
現在のプロジェクト
ASSについて
個人的な質問
何かもうひとつ
『レッド・リボン』について
a. 『レッド・リボン』で一番ユニークな点は何だと思いますか。
「手紙」とエリザベスは即座に答えた。その手紙はもともとは第二次世界大戦中に発見されたドイツ人の捕虜についての手紙で、彼女が自身の長編作『Gen』のリサーチ中に、優生学、つまり民族の選別についての文書の中で見つけたものだ。「その手紙を読んだとき、私は『なんてこと』と言った。まったく信じられない話だった。私は短編映画のテーマを見つけようとしていたんだけど、これはすごくいいテーマになるかもしれないと思った」。彼女が手紙を見せた人たちは、まずくすくすと笑い出すが、その手紙の重要性がだんだんとわかってくると、皆、氷のように押し黙ってしまった。エリザベスによると、『レッド・リボン』の台本の初稿も、実際コメディとして読めるということである。
エリザベスは次のようにも語っている。「『レッド・リボン』は私のはじめての短編作品で、あんまりいい出来だから長編の予告編みたいだってたくさんの人に言われたわ。私はとても才能ある人たちに助けられたの」。
b. 映画の完成で一番苦労したことは?
「苦労したことなんて、ぜんぜんなかった。仕事をしているときに、自分がいるべき場所にいるって感じたのは私の人生で初めての経験だった。小さなグリーン・マンか天使たちか、何かはわからないけど、幸運の使いが私たちと一緒にいたんだと思う。何にもたいへんなことはなかった。ほんとに何にもね」。
「撮影場所のアパートを最初に見たとき、鳥肌がたった。それはまさしく私が探していた場所だったから。すべてが完璧だった。賃貸料を除けばね。まったく法外な金額だった」。しかし彼女は交渉相手に粘り、他の誰かが全額を払って契約しない限り、ある週末だけかなりの安い料金で借りれるようこぎつけた。しかし正規に契約した人があらわれて、しかも撮影を1週間延期しなければならなくなったときには、エリザベスもパニックに陥った。「『もうどうしよう』て感じで。クルーも準備OK、すべての準備が整って5分後に撮影監督から電話があって、彼は私のクルーを全員つれて来た人なんだけど、『エリザベス、すまない。今やってる映画で、もう1週間拘束される。今週末は撮影できない』って言うので、「うーん、しょうがない。何とか次の週末も借りられるようにする」って、そんな感じね」。
撮影が始まっても幸運は続いた。アパートの撮影はすべて自然の太陽光で行うことができたし、少女の寝室にあるカーテンを運よくゆらす一陣の風も自然に吹いた。
c. 撮影中におこった思いがけない問題は?
母国語が英語ではなくフランス語のエリザベスは、彼女の通訳が撮影の3週間前に中国に出かけてしまったときには、ほとほと疲れ果ててしまった。「そのとき私は俳優たちとの仕事を始めたところで、変更事項がたくさんあったし、脚本も書き直したから、あちこち駆けずり回って聞いて回ったわ。『文法は大丈夫? 間違ってない?』って」。
『レッド・リボン』の撮影はエリザベスにとって最初の監督経験だったため、彼女は俳優やクルーに、自分をサポートしてくれるようあらかじめ宣言していた。撮影初日の様子を彼女は次のように説明している。「いつ『アクション』って言えばいいのかさえわからなかった。いつ言うか、最初は友達が指示してくれたのよ」。
それでも撮影は「マジックのようだった」と彼女は言う。「撮影監督は、彼のクルーはいつも何かしら文句を言っているけど、今回の撮影の3日間は誰も何にも不平を口にしなかったって言ってた…。まるで25年間も一緒に仕事してきたみたいだった。撮影はすごく簡単、つまり、信じられないほど簡単だった」。
d. これまでの上映の反応はどうでしたか?
エリザベスの観察によると「この映画を前にすると、誰もが中立的ではいられない。友人たち、私が会ったこともない人たち、会ったばかりの人たちからときどき、私の短編映画の悪い夢を見たっていわれた」ということだ。観た者に深い影響を与えているにもかかわらず、『レッド・リボン』は歴史ある短編映画祭の審査員には受けが悪い、と彼女は言う。「長編の予告編みたいだというのはあたっていると思うし、それじゃ短編映画祭には向かないわね。だって、[審査員は]完璧じゃなく、映画を始めたばかりの、彼らが助けてあげられる人たちを望んでいるんだから…。『レッド・リボン』は私の処女作で、私にはまだ学ぶべき多くのことがあるけど、私は『レッド・リボン』ですでに才能ある人たちに助けてもらったんだもの」。
パームスプリング・フェスティバルで『レッド・リボン』が上映されたときに、審査員たちがこの映画を正式出品作として認めなかったのでエリザベスはことのほかがっかりしたが、審査員たちはこの短編映画を高く評価した。「たくさんの審査員が私に、『レッド・リボン』が気にいった、といってくれた。審査員の何人かは『レッド・リボン』のテープをいろんな人に配ってくれた。ただ気に入った、って言うだけじゃなく、協力してくれたの」。
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短編映画について
a. あなたにとってなぜ短編映画がそれほど重要なんですか?
エリザベスは、短編映画はその監督の名刺代わりだと考えている。「たとえば、長編映画を作りたいと思ったときに、短編映画を作れば、その人の能力がわかるでしょう。私は短編をとばして長編を監督しようとしたけど、だめだった。プロデューサーを安心させる唯一の方法というわけ」。
エリザベスは非常に困難な環境で短編を製作する道を選んだ。「私はこれまでの知り合いとは一緒に仕事をしたくなかった。それは、自分を最悪の状態に追いつめたかったから。ただクルーを雇うのではなく、自分の知らない人たちと一緒に、母国語以外の言葉を使って、アメリカとフランスで仕事がしたかった(フランスでは編集作業を行っている)…。これは私には長編が作れるって証明するための作業だった。11分間で観客を笑わせ、それから泣かせることができるのは、まさに短編映画ね」。
b. なぜ長編ではなく短編なのですか?
「私たちの文明が高速化しているから。短編映画では始まりがあって、中盤があって、終盤がある場合もある。それもみんな10分、15分、20分程度でしょ。何もかも詰まっている。短編映画って、リーダーズ・ダイジェストみたい、というかフィルム・ビューワーズ・ダイジェストね」。
彼女は、長編よりも短編向きのアイデアもあるという。「5分のほうが、1時間半かけるよりもとってもおもしろいアイデアをうまく編集して示すことができるという場合もある」。
c. 短編映画は変革の時期にあると思いますか?
「もちろんそうだと思う」とエリザベスは言う。毎年数多くの短編映画が製作されているだけでなく、この動きに合わせて市場も拡大している。「たとえばフランスでは、大規模なTVネットワークの2つが、独自の短編映画チャンネルを持っているのよ!」。
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現在のプロジェクト
a. 現在はどんなプロジェクトを進めていますか。
エリザベスは現在、長編作『Gen』と、フランスでいくつかのコマーシャル・フィルムに取り組んでいる。『レッド・リボン』と違って『Gen』は現代のスリラーだが、この2つには民族の選別という共通したテーマがある。『Gen』は体外受精と遺伝子研究についてのサスペンス・ストーリーを通じて、このテーマを扱っている。「優生学はナチと一緒に滅んだと誰もが思っているけれど、それは大きな間違い」とエリザベスは言う。
b. 現在のプロジェクトはASSの短編映画の影響を受けていますか?
エリザベスの短編映画は、現在のプロジェクト『Gen』の影響を受けている。「『Gen』の脚本を書いたのは『レッド・リボン』の脚本を書く前だった。『レッド・リボン』の目的は、私には長編を作れるということを証明することだけだった」。
『レッド・リボン』は、現在の遺伝子研究と遺伝子操作について人々を啓蒙するための、彼女の言う「小さな聖戦」のひとつなのだそうだ。「遺伝子操作は人類がこれまで経験したことのない最大の変革で、どんな新聞も、たった1紙でさえ、今いったい何が起こっているかの真実を伝えていない…だから私はこの映画を作らなければならない」。
エリザベスは初め、ナチのホロコーストを生き延びた人物のドキュメンタリーを制作しようと思っていた。しかし調査に何年もかかる可能性があること、また観客がドキュメンタリーには興味を持たないのではないかと考えた。そのため『Gen』はスリラーになったのである。「観客がスリラーなら見るというのなら、そのスリラーにいろんな情報を入れれば、観客は我慢強く見てくれる」と彼女は言う。
c. 映画製作者としてのまたはそれ以外の、最終的な目標は何ですか。
「私の主目標は、1時間50分とか、それよりもう少し長い間、観客に私の映画を楽しんでもらって、私の世界に引き込めるようになること」。
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ASSについて
a. 日本の短編映画祭の話を聞いて、どう思いましたか?
エリザベスが最初にこの短編映画祭の話を聞いたとき、それがまだ2回目だと知ってたいへん驚いた。「私は15年くらいの歴史があると思っていた。初年度であれだけの人を集めるなんて、信じられない」と彼女は言う。
「たとえば私が思うに、日本では短編映画はそれほど一般的なものではないでしょう。日本の映画はカンフーや昔の話が多いのだから。私にとって日本はすばらしい国。チケットがすべてが売り切れ、観客は誰かが出てきたら席に座れるとただそれだけのために階段に並んでいたという話を担当者から聞いたとき、私はなんてすばらしいことって思った。最初の年でそこまで成功させるなんて! 劇場に入るために階段に並ぶような観客がいる映画祭なら、ぜひ選ばれたいと思った。すばらしいわ」。
b. 日本の観客が、あなたの映画から何を感じ取ってほしいですか?
「政府がすべてをコントロールするのは不可能だということ」。
c. 日本で米国の短編映画が受けると思いますか?
エリザベスは力をこめてイエスと答えた。「私は、日本人はあまり短編映画に慣れていないのだと思う。日本の映画は特にカンフーや昔の話が多いから」。
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個人的な質問
a. 好きな映画
「編集と効果では『ザ・ロック』。心から好きなのは『アマデウス』」。
b. 日本を一言で表すと?
「効率」。
c. 好きな映画監督は?
「私には好きな映画監督はいないと思う。好きなワインも、好きな食べ物もないようにね。とてもすばらしい映画を作る監督もいるけれど、彼らは完璧じゃない。たとえば、私は『ザ・ロック』の編集は好きだけれど、この映画では気に入らない点もある」。
d. あなたがドキドキした映画のラブシーンは?
「教えてあげる。すぐに思いつくの。『ピアノ・レッスン』で、ハーベイ・カイテルの手がホリー・ハンターの首筋に触れたとき。何てこと。彼があんなふうに手を触れた瞬間、こんなにエロチックなシーンは他にないわ。彼の手は完璧ね。ワオ」。
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何かもうひとつ
a. 「レイプを見るのはとても心乱されることだというのはわかるんだけれども、これも私の主要なテーマだった。私は映画でたくさんのレープ・シーンを見てきたから。もし私が男だったら、そういったシーンで興奮すると思う。でもちょっと待って、これは私が本当に見せたいものじゃない、って私は思った。これは痛み以外の何物でもない。レイプ・シーンを最初に撮ったのは、少女役の彼女とレイプ役の彼が撮影の間に友達にならないようにしたかったから。2人が会ったのは2日前。撮影以外では口をきかないように頼んだわ。だから食事中も二人は話さなかった…。レイプの撮影は彼女にとって、ほんとうにつらいことだったと思う。レイプの撮影が終わったとき2人に会ったし、そして次の日にも会ったけれど、彼女はほんとに空っぽになっていた。彼女は完全に壊れていたのね。彼女にとってはとってもつらかったと思うし、彼女には本当に感謝している」。「人間は何でも言う権利があるけれど、男でも女でも、このレイプが性的にエキサイティングだなんてことは誰も言ってはいけないこと。そして私にとってはこれが最大の挑戦なの」。
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