映画祭で入選するとハリウッドのエージェントからアプローチが来た! LAインタビュー:ランス・ラーセン氏

映画祭で入選するとハリウッドのエージェントからアプローチが来た! LAインタビュー:ランス・ラーセン氏

2010年に行われた、世界の映画業界で活躍する著名プロデューサーや監督への連続インタビュー。

長編を取りながらも短編映画を製作する意義とは?短編から学べる映画製作技術とは?ハリウッドや世界の映画業界で活躍する人々にお伺いしました。5年後でも色あせないインタビュー内容をお楽しみください。


 

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ランスラーソン氏
ユニバーサル社専属のエディター。CMのディレクターとしても活躍中。ショートショートフィルムフェスティバル2008年に「駐車場、犬、男と女(Bloom)」が入選し、来日した。現在、新作のショートフィルムの製作が待機中の他、長編作品の企画も準備している。
「映画祭入選が自信につながる。」

ショートフィルムは今までに何本制作しましたか?

ラーセン氏: 「ショートフィルムは4本撮りました。撮影監督はジャス・シェルトンで、学生アカデミー賞にもノミネートされた経歴があります。現在、大作の長編映画の撮影中ですが、昨晩、進行中のショートフィルム企画の件で、連絡をしてくる、熱くて、マメな男ですよ。(笑い)我々はまだ、子供みたいなものですね。それぞれ、この世界で家族を養っていけることは幸せなことです。」

ショートショートで入選をした「駐車場、犬、男と女」以後は?

ラーセン氏: 「駐車場、犬、男と女」のおかげで、長編の企画が2本、デベロップされる機会を持ちました。まだ、進行中ですが、ショートフィルムを忘れたわけではありません。ショートフィルムは長編作品の道標ともなります。映画祭も重要です。HOLLYSHORTS (www.hollyshorts.com)映画祭や、東京のショートショートで入選したとたん、ハリウッドのエージェントからアプローチを受けましたから。映画祭に参加する意味はあるのです。また、何よりも映画祭で「入選した」という事自体が自分にとっても、「自信」につながります。自分がアメリカで撮った映画が、たとえば、東京のショートショートでも評価を得る。国や人、文化が違っても、自分の作品が評価されるとは、すばらしいことではないですか。」

ショートフィルムの商業的観点はどう思いますか?

ラーセン氏: 「インターネットに関しては、将来に向けて試行錯誤していますね。人々は情報をいち早く得ることに慣れていますので、将来性は十分にあります。ウェビソード(webとepisodeが合体した造語:インターネット上で展開される番組の一部、予告編、ミニシリーズのコンテンツ)も大きくなりました。現代において、人々は時間が無いのです。そこで、7分とか20分のショートフィルムなら、携帯でも我慢できるでしょう。私が思うには、ショートフィルムのコンテンツにも、「スター」が必要です。どの国においても、そこのセレブは注目されるでしょう?私の妹が、普通にインターネットでショートフィルムを観るとはおもいませんが、好きなスター、俳優などが出演していると、視聴するでしょう。あと、広告業界も激変していますね。テレビのコマーシャルもあと5年では消えるかとおもいます。録画してもCMはスキップされるわけですから。そこで、ショートフィルムが活用されるとおもいます。スター、有名俳優を起用するか、もしくは「笑える」コンテンツとして、商品化すれば、人々は「それを見なくては!」と思うようになるのです。ナイキ社、バーガーキングなどかなり面白い広告モデルのショートフィルムを作っています。コマーシャルがショートフィルムになる。そんな時代は遠くないはずです。広告代理店もそれを感じていると思います。」

 

ラーセン監督にとって、良いショートフィルムとは?

ラーセン氏: 「良いショートフィルムの条件はまずは、脚本ですね。しかし、良い俳優の演技も含める「コンビネーション」が大事です。どちらかが、有利、不利でもよくないのです。良い作品は、音や字幕を消していても、映像で理解できるものです。また、良い作品は終わった後に観客に何かしら、感情を変えることができるものですね。」

ショートフィルム作りに重要なポイントは?

ラーセン氏: 「ショートフィルムは、共同作業だと思います。私は得に自分が監督だからといって、エゴを持っているわけではありません。すばらしい協力者達との作業です。「Four Brothers」、「GI Joe」などハリウッドのメジャー作品の脚本家であるデビッド・エリオットに現在、ショートフィルム企画の脚本をみてもらっていますが、彼にも共同監督など、クレジットを与えてもいいとおもっています。肝心なのは、こうした共同体での経験が、長編作品を撮る時のための練習といえるでしょう。過去15年間に渡り、編集者として仕事をしていますが、常に次のショートフィルムを作りたいと考えています。ショートフィルム制作の魅力は、物語を伝えるうえでの過程です。そこが面白くてやりがいを感じるところですね。今晩、デビッドと会い、脚本構成を詰めていきますが、これもプロセスです。(シ ョートショートで入選をした)「Bloom」は12稿まで書きましたから。物語を語る喜び、これは古代、火の周りで酋長が子孫に語り続けるように、人間にとって重要なことですね。」

若手フィルムメイカーにアドバイスをお願いします。

ラーセン氏: 「ショートフィルムを作るうえでのアドバイスとしては、やはり物語ですね。その物語は、自分のハートから感じるものでなければなりません。自分がどう映画祭に入選するかを考えるのは、次です。自分がどうしても人に伝えたい物語は、誰かにも共感されるはずです。その誠実な構えが、映画祭を含めて誰かからの評価につながると思っています。映画は、情熱ビジネスです。ひとつのプロジェクトに自分の心を信じて向き合い、観客がそれを感じてくれるのが最高の瞬間です。」

この7月から南米のコロンビアでショートフィルムを製作するラーセン氏。物語を最初から最後まで熱く語った。社会派のサスペンスで、物語のエンディングは、観客の想像にまかせる演出だという。