News & Reports
ニュース & レポート
10/25 『母は牛だった』ブラジルから来日のMoara Passoni 監督Q&Aレポート
2025.10.29
― 生命と死、母性、そして自然とのつながりを描く ―
『母は牛だった(My Mother Was a Cow)』のMoara Passoni監督が登壇し、作品に込めた想いを語りました。
監督は「日本でこの映画を上映できて本当にうれしく思います。日本はとても美しく、文化的にも刺激的な国です」と感謝を述べ、観客に笑顔で挨拶しました。

本作は、監督自身の人生経験をもとに制作された初のナラティブ作品です。
サンパウロで育った監督は、都会の喧騒を離れ、ブラジルの湿地地帯(パンタナール)で暮らすようになり、あるとき妊娠した一頭の牛と深くつながる体験をしたといいます。
「その牛を通して、私は生命と死をまったく新しい視点で見つめるようになりました」と語りました。
撮影は現地の牧場で行われ、出演者のほとんどは実際にその土地で暮らす人々です。
「脚本はありましたが、現場で人々と話し合いながら即興的に物語を発展させました。
最終的に、この映画は“地域の人々との共同制作”になりました」と監督は話しました。
主人公を演じたのは、当時12歳のルイーサ・バストスさん。
「彼女はプロの俳優ではありませんでしたが、非常に想像力が豊かで、撮影中にキャラクターへ深く入り込んでいく姿が印象的でした」と称賛しました。

撮影は8日間にわたって行われ、天候や動物の動きに左右される過酷な現場だったといいます。
それでも監督は「限られた機材と人手の中で、多くの挑戦を乗り越えられたことが誇りです」と振り返りました。
作品にはブラジル独自の**ミスティシズム(神秘主義)**の要素も含まれています。
監督は「子どもの頃、母を守ってもらうために神様に祈っていた記憶があり、その“スピリチュアルな感覚”をこの映画の根底に置きました」と語ります。
さらに、劇中で登場するジャガーの神話にも触れ、「ジャガーは恐れの象徴であり、同時に力の象徴でもあります。
この物語は、恐怖を受け入れ、生命の力に変えていく物語です」と締めくくりました。
現在、監督はジャガーをテーマにした新作ドキュメンタリーを準備中とのことです。




