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10/26「風流少女殺人事件」(台湾)のBirdy Wei-Ting Hung監督Q&Aレポート
2025.10.29
10月26日、秋の国際短編映画祭には、『風流少女殺人事件』のBirdy Wei-Ting Hung監督が登壇し、作品に込めた想いや制作の裏側を語ってくれました。
監督は台湾出身で、現在はサンフランシスコを拠点に活動されています。サンフランシスコ大学映画学科でMFAを取得し、台湾とアメリカの両方の文化的視点を持つ映像作家です。
『風流少女殺人事件』は、1980年代の台湾映画から大きな影響を受けており、特にエドワード・ヤン監督へのオマージュが込められています。
「私はヤン監督のリアリズムと、映像に“触覚”を感じるような質感に強く惹かれました」と語り、フィルム特有の質感を再現するために16mmフィルムで撮影を行ったそうです。

映画は、男性社会の中で抑圧されながらも自らの力で立ち上がる女性像を描いているといいます。
監督は「アジアの女性は長く“悲劇の容れ物”として描かれてきました。
私はそこに“怒りと抵抗”を込めたかったのです」と語り、女性たちの内面の強さを表現することを目指したと述べました。
撮影はわずか3日間という短期間で行われましたが、「16mmフィルムという高価な素材を使う緊張感が、現場の集中力を高めてくれました」と振り返りました。
音と映像の関係についても、監督はこだわりを語ります。
「映画は距離のあるメディアですが、私は観客に“近くで息づく音”を感じてもらいたい。
理解より先に、感覚が反応する映画にしたかったのです」と話しました。

キャスティングについては、「主演の女優とは最初の瞬間から強い信頼関係が生まれました」とコメント。
彼女の直感的な演技が、作品全体にエネルギーを与えたといいます。
編集にはイタリアのホラー巨匠ダリオ・アルジェントの影響もあり、監督は「初稿はまるでミュージックビデオのようでしたが、最終的には視覚と音を研ぎ澄ませて、より内面に響く構成に仕上げました」と説明しました。

最後に今後の活動について問われると、
「次の作品も短編になると思います。ショートフィルムという形が、私の表現に最も合っています」と語り、観客から大きな拍手が送られました。



