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国際会議「AIと映像制作の未来」開催レポート
― 世界10名の映画制作者が語る、創造と倫理、そして映像の未来 ―
2025.10.27
登壇パネリスト(名前のアルファベット順・敬称略)
Marcel Barsotti(独)/Gundula Barsotti-Bast(独)/Shin Chul(韓)/Hussein Dembel Sow(セネガル)/Takeshi Kushida(日本)/Alexandre Michelin(仏)/Douglas Montgomery(米)/Oscar Parres(墨)/Javid Sobhani(イラン)/Hiroki Yamaguchi(日本)
2025年10月26日(日)、赤坂インターシティコンファレンス the air にて、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)と文化庁「日本博2.0」事業による国際会議「AIと映像制作の未来」が開催されました。この国際会議には映画監督、脚本家、メディア戦略家、映画祭ディレクター、プログラマー、キュレーターなど、映画とAIの最前線で活躍する世界各国からの専門家10名が登壇。AIがもたらす映画制作の変革、倫理、創造性、そして次の10年の映像表現について活発な議論が行われました。議論の冒頭では、「AIは芸術的パートナーか、それともツールか?」という問いが投げかけられました。日本の映像作家 串田壮史 氏は、「AIは“共同制作者”としての可能性を持つ存在。過去と未来、知識と感性をつなぐ“新しい教師”です。」と述べ、AIが人間の創造性を拡張する存在であると語りました。ドイツの作曲家・映画監督 マルセル・バルソッティ 氏は、AIを全面的に活用した最新作『Imperia』を例に挙げ、「脚本、音楽、音響、編集まですべてをAIとともに作り上げた。これはテクノロジーではなく、新しい芸術の形だ。」と発言。共同脚本家の グンドゥラ・バルソッティ=バスト 氏も登壇し、「AIで作業は効率化されるが、物語の感情的な核は人間が守らなければならない。」とコメントしました。
韓国の富川国際ファンタスティック映画祭(BIFAN)ディレクター シン・チョル 氏は、「AIは世界の映画制作者が共有する新しい言語です。私たちは作品を“評価する”時代から、“対話する”時代に入っています。」と語り、AI映画と観客の新たな関係性を提示しました。倫理をテーマにしたセッションでは、著作権や開示の在り方をめぐり多様な意見が交わされました。バルソッティ監督は、「AI作品は明確にラベリングし、制作者が真正性を証明することが重要。」と述べた一方、串田監督は、「AI使用の明示が創作の神秘性を損なう場合もある。知的財産の保護のためにも開示の必要性はない」との考え方を占めました。
と発言しました。アメリカのメディア戦略家 ダグラス・モントゴメリー 氏は、「AIによる情報生成は膨大だが、最終判断は常に人間が行うべき。」と述べ、AIと人間の協働における責任の明確化を提唱しました。イランのプログラマー兼映画制作者 ジャヴィド・ソブハニ 氏は、「制作者がAIの関与を明確に開示し、透明性を保つことが信頼を生む。」と語り、AI映画の倫理的基盤について述べました。
セネガルの映画監督 ウセイン・デンベル・ソウ 氏は、「AIは資金や設備が限られた地域でも映画制作を可能にする。技術の公平なアクセスが文化の多様性を守る鍵になる。」と発言。アフリカの視点からAI技術の社会的意義を語りました。
フランスのメディアプロデューサー アレクサンドル・ミシェラン 氏は、「AIはクリエイターを民主化する一方で、文化を標準化する危険もある。倫理と創造を同時に進化させることが求められています。」と総括しました。
最後のセッションでは、AIによって映画はどのように変化していくのか、10年後の展望が語られました。バルソッティ監督は、「実写・CG・アニメーション・AIが融合する“ハイブリッド映画”という新ジャンルが生まれる。」と述べ、AIが映像表現を拡張していく未来を予測。串田監督は、「2035年にはAIでしか映画を作ったことのない世代が現れ、映画はより個人の嗜好に合わせて“パーソナライズ化”していくだろう。」と語りました。メキシコの映画監督 オスカー・パレス 氏は、「AIは車輪の発明に匹敵するほどの革命だが、効率化が感情の欠如を招かないよう注意が必要。」と発言。モントゴメリー氏は、「映像作品の数は爆発的に増えるが、本当に価値ある作品を見つけ出す“発見力”こそがこれからの鍵になる。」と締めくくりました。セッションの最後には、登壇した10名がそれぞれ1分間のメッセージを寄せ、モデレーターの東野正剛が次の言葉でまとめました。
「AIは人間の創造力を映す鏡であり、それを拡張する存在です。倫理と多様性こそが、AI時代の映像芸術を支える柱となるでしょう。」
最後に壇上で10名のパネリストが並び、フォトセッションを行い、る国際会議は幕を閉じました。
この日交わされた多様な視点と対話は、AIと映画の共創による新しい時代の幕開けを印象づけるものとなりました。
主催:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)
文化庁/日本博2.0(Japan Cultural Expo 2.0)
会場:赤坂インターシティコンファレンス the air



