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TOKYO
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2013.06.16

ブリリア ショートショート シアター イランの名匠、アミール・ナデリ監督による「シネマへのオマージュ」トークイベント


本日は、アッバス・キアロスタミやモフセン・マフマルバフらとともにイラン映画が国際的に脚光をあびるきっかけを作り、「駆ける少年」(86)、「水、風、砂」(89)は両作ともナント三大陸映画祭グランプリを受賞しているイランの名匠、アミール・ナデリ監督によるトークイベントが開催されました。(司会進行にSSFF&ASIAフェスティバルディレクターの東野正剛、通訳にDJ JOHN)。イランニューウェーブの寵児であるナデリ監督の来場に会場も満員でした。

 
Q:少年時代、映画にはどのように接していたのでしょうか?
A:生まれたときから映画監督になる運命だったんです。私の場合、家族がいませんでしたし9歳くらいから映画館で働いていましたから。映画館が学校だったんです。
 
Q:ニューウェーブ以前、以後と言いますか、70年~80年代のイラン映画界の状況はいかがだったのでしょう?
A:80年まではイランの映画はあまり良くなかったかもしれません。それから私を含めて7人の監督がニューウェーブと呼ばれ、海外の映画祭で上映され注目されるようになったんです。日本映画を初めて見たのは70年代のパリのシネマテイクでした。
 
Q:映画製作についてですが、キャリアの初期はどのように撮影をされていたのですか?
まず、色んな作品のアシスタントをしていましたね。有名な役者と仲良くなって、出演してもらったりもしますが、アマチュアの役者を使うのも私の作風のトレードマークです。私が監督した一作目と二作目は役者がお金を集めてくれたんです。役者との信頼関係が構築できていたからだと思います。
 
Q:キアロスタミ監督やマフマルバフ監督との交流について
A:キアロスタミとの出会いは70年代、20以上の作品で仕事をしました。キアロスタミはデザインが得意で、私は写真や編集が強かったのでコンビで仕事をこなしていました。キアロスタミ用にショートフィルムを作りなよと脚本を2本書いたこともあります。キアロスタミの作品は完成すると、まず私がチェックするんですよ。お互いの信頼関係性があるということですね。また、いまのイランの若手はラッキーだと思います。石油問題がないので政府からの支援も途切れません。
 
Q:なぜイランの作品は評価されるのでしょうか?
A:私はこども時代から映画をアートとして考えてきました。イランの作品が評価されているのはアートに実体験が描かれているからです。それを世界の人がシェアできるから、ということだと思います。
 
Q:アジア インターナショナル部門 優秀賞『私の街』について
(監督:ティナ・パクラバン|イラン|8:00|ドラマ|2012)
 
A:まず、女性監督による作品ということがポイント。彼女にとっては3作品目みたいだね。ポリティカルな作品だけど、具体的な描写はない。この作品全体が人間や歴史を描いていてそれが人の心を動かしているね。彼女の訴えたいことが伝わってくる。イランでは若手監督たちがコミュニケーションを多くはかっているんだ。古典の研究などもしているし、ちなみに、この作品はタルコフスキーのカメラワークも取り入れられているのではないかと思うね。
 
Q:『駈ける少年』も『CUT』もそうでしたが、映画監督としての“想い”をどのように映画に落とし込んでいますか?
 
A:いい質問だね。なぜ自分はそれが欲しいのか?なぜそれがしたいのか、に常に対峙していなければいけない。自分の訴えたいものを作品に落とし込むとはそういうこと。
 
Q:影響を受けた日本映画はありますか?
A:ここ10年、日本で映画について教えていたりするんだけど、私自身、カメラワークは黒澤、女性は成瀬巳喜男、戦争における人間の愚かさは市川崑、小津からは音楽の取り入れ方など日本映画が及ぼした影響はとても大きくて。当時は大使館でその国の映画の上映をしていました。また、パリのシネマテイクで新藤兼人監督の『裸の島』作品を観たのを覚えています。あのころは翌日のチケットをとるために公園で寝たりもしました。ロベルト・ロッセリーニなど世界の巨匠監督も日本映画を見ている。日本はとても貴重な映像文化を持った国なんです。
 
Q:最後にクリエイターに向けてお願いします。
A:私の若い頃は、起きてバスに乗って映画館で映画を見る。翌日も起きてバスに乗って映画館で映画を見る、の繰り返しでした。いまの世界はインターネットやDVD簡単に作品がみれてしまう。自分自身の経験をどのように生み出すか、ということが大切なんです。昔の映画作品は宝の宝庫ですよ。レンズなどクローズアップはクラシックな作品から学ぶものです。
 
実体験を紡ぎだすこと。
魂と心を映像に落とし込むこと。
作品の良し悪しはテクニックじゃない、自分のオリジナルをどのように出すか。

トークイベント終了後はロビーでナデリ監督のサイン会を実施。参加者からの握手や質問に快く答える監督の姿からは、映画を愛しているということが多分に伝わってきて、まさに『駆ける少年』のアミールでありました。
 

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