Awards
受賞情報
SSFF & ASIA 2025 各賞の受賞結果
ジョージ・ルーカス アワード グランプリ
George Lucas Award(Grand Prix)
ライブアクション部門
Live-action Competition
インターナショナル 優秀賞
破れたパンティーストッキング
ファビアン・ムンスターヤーム
『破れたパンティーストッキング』は、卓越した演技によって、興奮、不安、苛立ち、そして優しさといった繊細な感情の移ろいを見事に表現し、観る者の心を惹きつけました。カップルが日常の中で直面するすれ違いや葛藤を、限られた空間とリアルタイムの展開を通して丁寧に描き出し、短編ならではの濃密なドラマを実現しています。
女性にとって身近な「パンストが伝線する」という出来事を起点に、物語は次第に感情の主導権が彼女から彼へと移り変わっていく様子を巧みに描いています。ワンカットで撮影された演出は、演者と脚本の完成度の高さを際立たせ、まるで目の前で現実の一幕を目撃しているかのような臨場感を生み出しています。
日常のささやかな変化が行動や感情に与える影響を捉えながら、両者それぞれに共感が移っていく構成はスリリングであり、同時にとても人間的。短編映画の魅力がぎゅっと凝縮された、まさに秀逸な一作です。
審査員:Debo Adedayo、福間 美由紀、上野 樹里
アジアインターナショナル 優秀賞/東京都知事賞
燃夜
ディーモン・ウォン
刹那的な若者のエネルギーと社会的な不穏さを、映像美とドキュメンタリーのようなリアリズムで描いた印象的な作品。説明的な台詞を排しながらも、観る者をその夜の熱気と衝動の中に引き込む映像演出が光ります。反日デモや炎をモチーフに、無軌道な青春の象徴として「燃える夜」を描き出し、まるでパリ郊外の若者たちを切り取るフランス映画のようなジャンル感が漂います。路上でのカメラワークや映像の流動性も素晴らしく、若者の内に秘めた高揚感や、祭りの前のような高まる空気感が観客に強く伝わってきました。短くも鮮烈な瞬間の連続が、炎のように心に焼き付きます。
審査員:岩井 俊二、Sandrine Cassidy、神保 悟志
審査員コメント
– 岩井 俊二
『燃夜』は 全体的に非常に良くできていたと感じました。台詞が少なく、説明的でなかったのも良く、ドキュメンタリーのようでもあったと思います。若者の刹那的な何かが、英題の「Burning Night」 にもある火というテーマと交差し、一つの夜の表現方法として印象に残りました。無軌道な青春期と反日デモを火で描く象徴的な作品であると思います。
スペシャルメンションとして選んだ『モティ』はコロナ時代が去るとともに去ってゆくモティが象徴的で神秘的で、良い読後感がありました。また、物語も非常に分かりやすく、我々が体験したコロナというというものと、モティという人間になってしまった犬が旅立っていくところがリンクして観客は不思議な気持ちにさせられる、というところが良かったと思います。
– Sandrine Cassidy
『燃夜』は私にとって楽しんで見ることができた作品でした。都会に生きる若者たちの姿がいきいきと描かれているところも良いと思いました。 ファンタジーや幽霊、死者が生き返るといった話ではなく、とてもリアルなものに感じられました。 パリ郊外の若者たちの反発を描いたフランス映画を思い出させるような作品であり、今日的だと感じました。カメラワークも素晴らしく、ストリートで撮影した場面の流れるようなフローも良かったと思います。
スペシャルメンションに選んだ『ブラインドスポット』は まるで魔法のような作品で、とても気に入りました。母親との関係性が美しく描かれていて、脚本が繊細で親密だと思いました。優しさと深い感情が溢れていて、まさに極上のフィルムメイキング。クラシックな演出が作品をしっかりと支えていて、とても完成度が高いと感じました。スープリヨという少年も素晴らしかったと思います。脚本は深く、登場人物たちが物語の中で本当に生きているように感じました。観客としては外から彼らの人生を見つめているだけなのに、それが心を奪われるような体験だったと思います。
– 神保 悟志
『燃夜』は 若者のエネルギー、祭の前の高揚感のようなものが映像から伝わってきたと思います。演じている側のパワーも感じられたところが良かったです。
スペシャルメンションに選んだ『旅の女』はストーリー展開や演技力なども含め、主人公の心情が非常に良く伝わってきました。全体的にバランスが取れていて素晴らしかったと思います。
ジャパン 優秀賞/東京都知事賞
逆さまの天才
西 遼太郎
『逆さまの天才』は、短編映画の魅力を存分に発揮した、ユニークで遊び心あふれる作品です。視覚トリックをテーマにした着眼点が斬新で、観客の好奇心を刺激し、思わず 2 度観たくなるような中毒性があります。実際に画面を逆さにして再視聴したという声もあるほど、没入感のある世界観が構築されています。奇抜なアイディアを最後まで貫きながらも、作品としての完成度が高く、映像、演出、美術のすべてがバランス良く融合している点も印象的でした。特に美術のディレクションやスタッフの努力にも注目が集まりました。他の作品と一線を画す強烈なインパクトと、軽やかなユーモアに溢れた傑作です。
審査員:岩井 俊二、Sandrine Cassidy、神保 悟志
審査員コメント
– 岩井 俊二
『逆さまの天才』はとても素晴らしい作品で、監督の意図やビジョンというものをしっかりと感じました。目の錯覚という着眼点が面白く、2度見たくなる作品です。私も2度目は画面を上下逆にして見てしまったほど。人間にはこんな目の錯覚があるのかと初めて知りました。美術スタッフさんの努力にも一票。
スペシャルメンションには『ABYSS』を選びました。この物語はどうなって行くのだろうかと、最初から最後まで観るものを惹きつける展開でした。夜の闇が観客に物語を読み解く余地を与えていると感じました。日々ニュースなどで目にする暴力や殺人事件などと重なるものがありますが、最後は意外な展開に向かい良い意味で裏切られたと思います。暗黒を有効に利用し、観客にいろいろなものを想像させ、考えさせる余白を持たせるというところも同じ映画監督としても学ぶものが多かったと感じました。
– Sandrine Cassidy
『逆さまの天才』はオリジナルなストーリーで、深みがありつつも面白く、短編映画らしい作品だったと思います。決められた尺の中でとてもよく作りこまれており、ユニークでちょっとふざけた設定を最後まで貫いたところも良かったと思います。私はその世界にすっかり入り込み、彼らが作り出した世界にいるかのように感じることができました。短編映画でこれほどの完成度を出すのは難しいですが、とても素晴らしい仕事をされていると感じました。
スペシャルメンションには『馬橇の花嫁』を選びました。
本当に大好きな作品で、画面から目が離せませんでした。映像も素敵で、雪の景色などスケール感があったと思います。この時代の恋愛結婚という考え方に対して、主人公たちを取り巻く家族の反応が思いのほかあたたかく、協力的であったところにも驚かされました。
– 神保 悟志
『逆さまの天才』はインパクトが一番強かった作品です。全体のバランスも良く、面白かったです。ジャパン部門の他の作品と色々な意味で全く違う作品でもありますが、正直見た作品の中で一番大きなインパクトを感じました。
スペシャルメンションには『あいをたてる』を選びました。映像がとても綺麗でストーリー展開もとても良いと感じました。俳優の演技にも説得力があり、映像美とストーリーともうまく重なり合い、見応えのある作品になっていると思います。リアリティーのある作品です。
その他部門・公募プロジェクト
Other Competitions
ノンフィクション部門 優秀賞
塀の中で
ネイサン・フェーガン
『塀の中で』は、深い感情と芸術的な勇気をもち、ノンフィクション作品として類まれな力を放っていました。2年間にわたる肉声の記録と繊細なストーリーテリングを通じて、独房に閉じ込められた人々の過酷な現実に光を当てながらも、彼らの心の内側にそっと寄り添うような語り口が印象的です。
ジャンルとしては異例ともいえるアニメーションの手法を用いたことで、難しいテーマをより観やすく、共感を生みやすい形で描き出しています。その選択は観客に余白と想像の余地を与え、物語の本質を損なうことなく、むしろ力強く伝えることに成功しています。アニメーションに対して先入観を持っていた審査員でさえ、その考えを覆されるほどの説得力を持った作品でした。
人間が極限状態に置かれたとき、空想やフィクションがいかに重要な支えとなるかを思い出させてくれる本作は、フィクションの本質的な価値をも静かに問いかけています。舞台はアメリカですが、冤罪による長期拘束や、失われた人生の時間といった問題は、袴田事件のように日本でも現実に起きており、本作のメッセージは国境を越えて私たちに問いかけてきます。
形式と内容の両面で強い信念が感じられる本作は、観る者の心と記憶に深く残り、気づきと変化をもたらす映画です。
審査員:Debo Adedayo、福間 美由紀、上野 樹里
審査員コメント
– Debo Adedayo
『塀の中で』は芸術と提唱を融合させた、非常に説得力のある物語です。この作品は、観客をただ楽しませるだけでなく、教育し、情報を提供し、そして意味のある変化を促すために作られた、社会改革への力強い呼びかけとして際立っています。感情的な共鳴と明確なメッセージ性のバランスにより、非凡でインパクトのある作品になっています。
また、本作は私のアニメーションに対する見方を完全に変えてくれました。アニメーションだからこそ物語がより共感しやすく、見やすく、そして伝えたい本質が損なわれることなく届けられているのです。アニメーションというツールが意図と誠実さを持って使用されると、物語のインパクトを強力に増幅できることを証明してくれました。本作はアニメーションを使ったノンフィクション作品というジャンルの可能性を広げてくれると信じています。
また、スペシャルメンションとして挙げた『マット先生の一日』も非常に感動的でした。とても美しく、そして脆く繊細なものを感じさせ、胸を打つ作品です。
– 福間 美由紀
独房という絶対的な孤独の極限状況で、人が最後にすがるのは「空想」である ──『塀の中で』は、フィクションという営みが人間にとってどれほど本質的 で不可欠なものかを静かに、そして力強く訴えかけてきます。当事者の肉声と いうリアルを交えながら、あえて虚構性の高いアニメーションというアプロー チを選んだ点に、作り手の強い意志と、表現への信頼、そして覚悟を感じまし た。アメリカを舞台としつつ、日本の袴田事件を想起させる冤罪による⻑期拘 束の問題を浮かび上がらせ、無実の人間から決して取り戻すことのできない人 生の時間を奪うという“社会の罪”を突きつける、非常にアクチュアルな作品と して選びました。
また、スペシャルメンションに選ばさせて頂いた『色をこえて⻘を見る』は、「⻘」という色そのものに対する私自身の見方を根底から揺さぶるような、深遠で詩的な作品でした。藍染の伝統技術に魅せられ、色覚の異なる仲間と共に究極の⻘を探求していく姿は、神秘的で心を打ちます。色彩にまつわる歴史や認知科学、そして個人の記憶が繊細に折り重なりながら、「色とは何か」「見るとはどういう行為なのか」を多角的な視点から問い直す、深い奥行きと余韻を湛えた作品でした。
– 上野 樹里
この作品は、人の一生に大きな影響を及ぼす非常に重いテーマを提起しています。2 年にわたる肉声の録音は、取り返しのつかない時の喪失を物語る。アニメーション無くして誕生することは出来なかった希少性の高い内容と重い余韻。アニメーションという手法が肉声を和らげ、観るものの心を支え、想像の余地が与えられつつも、最後にはしっかりと残された問題提起から、誰も目を逸らすことは出来ないでしょう。世に伝える必要性を強く感じさせられました。
スペシャルメンションには『いつかきっと抱きしめたい』を選びました。 1人の父親が真っ直ぐ正義を貫いた結果、社会の不条理な都合で小さな娘を残して愛する家族と長い間引き裂かれた。その時の重み。再会した時には老いた父と大人になった娘。父が娘へ幾通もしたためた手紙が時の狭間から、揺るぎなく温かい愛を溢れ出しており、複雑な空白の溝という現実とのコントラストが作品に深みを与えていました。もしこんな不条理な出来事がなければ、家族はもっと自然に愛を深めていただろう——そんな「もしも」への想いと、現実の中で少しずつ溝を埋めていく過程が丁寧に描かれ、もう夢物語ではなく、実際に家庭の中に鮮やかな色彩が戻ってくるのを心して見守りたくなりました。
アニメーション部門 優秀賞
夏の白夜
ルーク・アンガス
夏の白夜は、壮大な自然の美しさと人間の繊細な感情を見事に描き出した、視覚的にも感情的にも心を打つ作品です。シンプルながら奥深いストーリーの中で、イヌイットの暮らしの細部や、白夜と極夜のコントラストを巧みに取り込み、喪失を抱える主人公の心の変化を繊細に表現しています。空、雪、森といったシンプルな映像の中に、釣り針で作ったカレンダーなどの象徴的なディティールが散りばめられ、作品へのこだわりを感じさせます。太陽が再び昇ることが必ずしも希望ではなく、愛する人を失ったことでその光が寂しさを増すという逆説的な感情は、深い感動を呼び起こします。音楽も登場人物の心情に寄り添うように効果的に使われており、アニメーションとの調和が印象的でした。自然とともに暮らすことで、人は魂とつながる方法を見つけられるのかもしれません。喪失の中にある美しさや癒しを、静かに、しかし確かに問いかけてくる作品です。
審査員:杉山 知之、岡本 多緒、小田井 涼平
審査員コメント
– 小田井 涼平
-『夏の白夜』は映像の素晴らしさはもちろんのこと、シンプルなストーリーながらもイヌイットの生活の細かいディティールや、白夜と極夜の対比をうまく取り込み主人公の感情を効果的に表現していると感じました。画像の中に出てくるものも空、雪、林などとてもシンプルな中にも、釣り針で作ったカレンダーなど細部までとてもこだわりを感じました。自身もスウェーデンと繋がりがあるため、現地でリアルな白夜を経験し、夏の太陽に対する人々の喜びを肌で感じた事がありますが、この作品にはその逆のものを感じました。本来太陽が出るということは恵みであり、陰と陽で表すと陽ですが、この主人公は逆。大切な人を亡くしたことで太陽が出ると寂しくなってしまう、その対比がとてもユニークに感じ、感動させられました。見ていて自然と涙が出てくる一本でした。
スペシャルメンションに選んだのは『アープになった娘』。映像はグロテスクに感じましたが、物語のメッセージ性が強い。その影にあるのは文明社会への警告で、人間こそが地球から見れば妖怪なんだと言われてる気がしました。実写とアニメの融合が違和感なく、ゴミや汚染環境はアニメで描くよりも現実としてリアルに見えました。
– 岡本 多緒
『夏の白夜』は日常の描写がとてもリアルで素晴らしい作品です。主人公の服の質感や生活の細かい描写までリアルに表現されていて、可愛らしかったです。質感の表現は技術的にも高度なものではないかと思います。また、音楽とアニメーションの関係を考えさせられました。特にテーマ曲が場面によって効果的に使われていおり、二人の主人公の心情によってとても良い使い方をされていたと思います。
スペシャルメンションに選んだ『雑草の逆襲』は 絵本の世界観のようなビジュアルが気に入りました。セリフが無いながらも飽きずにずっと見ていられるような作品です。子供から大人までわかりやすいメッセージではあるものの、外部のものを排除するという我々人間が昔から繰り返してきたことを花畑という設定の中でうまく表現されていたと感じました。
– 杉山 知之
『夏の白夜』は厳しい環境の中でも信じるものがあれば生き抜いていけるという人間の特徴をこういったストーリーで表すことが可能なのかと感動しました。地球の美しさと人間のあるべき姿を問いかけていると思います。白夜と極夜、愛する人を失った孤独さには太陽は暖かくない。白夜の中に輝く星を見つけ、暦を捨てた主人公の喜びが印象的な昨品です。壮大で美しい白銀と銀河の輝きが素敵でした。自然の中で暮らすと魂と交信する方法を見つけることができるのかも。
スペシャルメンションに選んだのは『彼女が望むもの』。素晴らしいアートワーク、流れるようなアニメーションが美しい作品です。主人公の心の中を川のほとりとして描くアイディアが素晴らしいと感じました。やがて主人公は真実に向き合うのです。調和が心を満たしました。
U-25 プロジェクト 優秀賞
楽しいバレンタイン・デー
柴田 九
ユーモアと魅力あふれる、フレッシュでエネルギッシュな作品。音楽と編集のリズムがぴったりと合い、監督のセンスが光ります。丸刈りの主人公の表情や、体を張った演技など、出演者全員から「チョコが欲しい=モテたい!」という情熱がビシビシと伝わってくる、青春のパワーに満ちた一本です。これまでのU-25 では見られなかったタイプの作品で、MV としてもコメディとしても完成度の高い、自由でのびのびとした快作です。
講談社シネマクリエイターズラボ
来世のせいら
緒方 一智
楽屋裏
八幡 貴美
おっとのあし
古舘 寛治
第11回ブックショートアワード
雨恋
中西真理
ブックショート 奨励賞
迷信
比護歩夢
SSFF & ASIA 2025 Promotional Movie Contest 優秀賞
阪本沙衣(シシィ)
BRANDED SHORTS
BRANDED SHORTS
インターナショナル部門
Branded Shorts of the Year
ネット論争|Meat & Livestock Australia
【広告主】Meat & Livestock Australia
パーソナルブランディングアワード
あきとんとん
ガダバウツ
サイバーバニー
各種アワード
Other Awards
TAKANAWA GATEWAY CITY AWARD
河瀨直美
特別賞
MIRRORLIAR FILMS Season7
話題賞
『変な声』
阪本裕吾
審査員コメント
– Debo Adedayo
『破れたパンティーストッキング』は演技が本当に美しく、心を打たれました。混乱や興奮、不安といった複雑な感情を、俳優たちがとても自然に表現していて、見事でした。関係性の中で起こるすれ違いや衝突、そして静かな和解の流れも繊細に描かれていて、限られた空間の中で光やカメラ、動きが見事に融合していました。 一方、『堅くなったパン』はパンというシンプルなものを象徴に、社会的・政治的なメッセージを強く打ち出していました。村という小さな社会の中で、人々が自分ごとになって初めて声を上げる姿が印象的で、非常に考えさせられる作品でした。 どちらの作品も、それぞれ感情的にも知的にも深く心に響き、ショートフィルムの力を強く感じさせてくれました。
– 福間 美由紀
『破れたパンティーストッキング』では、女性にとって身近な「パンストの 穴」を物語の出発点とする発想がユニークで、緊迫感を生むタイムリミットの 設定、そして切実なテンションが女性から男性へと逆転していく展開も見事でした。ドレスアップしたままの姿で感情がうねり、剥き出しになっていく様子が、俳優たちの繊細な演技と⻑回しのカメラによって臨場感たっぷりに映し出され、強く惹き込まれました。家という限定的な空間で、短編ならではの濃密 なドラマを描き切った、まさにショートフィルムの面白さが凝縮された一本です。
『パッサリーニョ』は、親への愛と反発、友情、初潮、憧れ──少女の多様な 通過儀礼を、短い尺で余すことなく軽やかに描いたチャーミングな成⻑物語。 サッカー選手のサインを得ようとする冒険と、母娘の関係修復という 二 つの 軸が巧みに交差し、魅力的なキャラクター、テンポの良い編集と音楽が一体と なって、心地よい躍動感と豊かな余韻を生み出していました。
– 上野 樹里
『破れたパンティーストッキング』は、冒頭からラストまでワンカットで構成されライブ感があり、完成された演技力と脚本で終始楽しませていただき感激しました。日常だけどちょっと特別な日だからこそ、あってほしくないけど起きてしまう小さな出来事には、誰もが共感性も高く持つことでしょう。カメラワークもショートフィルムならではの手に汗握る演者との一体感に熱量が伝わった点も魅力的でした。タクシーを呼んでもどんどん到着が遅れていく設定も今っぽく、物語の中盤からは、どちらの気持ちにも共感できるバランスがあり、テンポ感も最高に良かったと思います。
『いないいないばぁ!』は、登場人物も少なく物語の構成はとてもシンプルですが洋題は、「I See You」“気づき”という意味合いを持つ言葉で、主人公の女性がダウン症の娘にタイトルであるこの言葉を伝えるシーンが本編の中でとても印象的で美しい循環が心に残りました。母親が子育てに葛藤する中、娘の小さな命から教えられた本質的なもの、自分自身に誓う、シンプル且つ鮮明に表現しているラストシーンだったと思います。