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SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2015

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【動画・書き起こし配信】冲方サミット×ブックショート#3:冲方作品の二次創作解禁・新人発掘プロジェクト「冲方塾」
2015-08-04

ショートショート フィルムフェスティバル & アジアが二次創作をテーマに短編小説をWEBで公募し、大賞作品をショートフィルム化、ラジオ番組化するプロジェクト「ブックショート」。SSFF & ASIA 2015内で人気作家 冲方丁氏を中心に、出版社やビデオメーカーのスタッフが集結した組織 「冲方サミット」とのコラボイベントを開催し、冲方作品の二次創作解禁・新人発掘プロジェクト「冲方塾」の詳細が発表されました。今回解禁されたのは、「マルドゥック・シリーズ」「天地明察」「もらい泣き」の3作品。1,000文字以上10,000文字以下の短編小説をブックショートWEBサイトにて募集中!第3回の今回は、映画祭代表の別所と冲方さんの対談です!ぜひ動画もご覧ください。

『冲方サミット×ブックショート Part3』


司会1:それでは、ShortShortFilmFestival&Asia代表別所哲也さん、そして改めて冲方丁さんにご登壇頂きましょう。ではお二人を盛大な拍手でお迎えください。

司会2:もう出演者の皆さんとスタッフさんが段取りが良いので1時間たっぷり取らせていただきます。よろしくお願いします。

別所:どうも今日は僕たちの結婚式にありがとうございます。

冲方:こんなにいっぱい。

司会2:ほんまにツイートされますよそれ。僕らからしたら変なツーショットですよね、意外なツーショットなんですが。そうなんですよね意外な接点があるとか。

司会1:どんな感じで出会ったのか

別所:出会いは随分前なんですけど、僕がJ-WAVEでTOKYO MORNING RADIOという番組を今もやらせて頂いているんですけど、そちらにで冲方さんにゲストでお越しいただいて、その後冲方さんがこの冲方サミットというのをやられて、色々二次創作というかご自身の作品のことを色んな形で発信を、読者の方、ファンの方、あるいは創作活動をする方と繋がっているというのを知りまして、時を同じくして僕たちも実は私が主催をしているShortShortFilmFestivalという映画祭なんですけれども、この中で短編小説からショートフィルムを作ろうとか、短編小説からラジオドラマを作ろうみたいな二次創作をしたいなと思っていた矢先、冲方さんに是非会いたいとラブコールをして飲み会でね、お食事会ですけれども、お会いしまして、フォーリンラブしたという。

司会2:その日にフォーリンラブ?冲方さん間違いないですか?

冲方:いやあ、やっぱり素晴らしい話でしたね。メロメロでしたね。

司会2:そのときの話にメロメロ?

冲方:ショートショートフィルムフェスティバルの成り立ちから、ブックショートをされる経緯、理念。また数あるはずの、乗り越えなければならないたくさんの障害の乗り越え方。もう何もかもがすばらしくて、どうしたら追いつけるんだろうなと。本当に今、「追いつけ、追いつけ」ですよ。「追い越せ」じゃないです。

司会1:一緒に?

別所:「共に歩く」ですかね。

司会1:どんどん結婚が。(笑)

司会2:ラブコールがすごいですね、今日。

別所:すみません、冲方さんのファンの方がいっぱいいらっしゃるんですよね、今日は。

司会2:でもきれいなお二人ですからね、イメージはぴったりですよ。

第一印象はどうでした?第一印象から一緒になりたいみたいな(感じでしたか?)

冲方:一番最初の印象は朝のラジオですよね。

別所:そうですね。

冲方:すっごくフランクに(接してくださって)。僕実はラジオが一番苦手なんですけど、あの沈黙の空間というか、非日常的な空間がすごく苦手なんですが。ものすごく優しくリードしていただいて。

別所:聞いたか?

司会2:「優しくリード」。ちょいちょい惚れ込んできましたね。優しくリード。

司会1:タグが増えますね。

司会2:リードは大事ですよ、リードはね。

冲方:その後、別所さんがというわけではないのですが、キングレコードがらみだったかミュージカルを観にいったんです。レミゼ(レ・ミゼラブル)を観にいったらたまたま別所さんが演じられていて、「うわすごい、この人本当に役者だったんだ」と。失礼な話なんですけど。

司会2:失礼な話ですよ。(笑)またイメージが違いますもんね。ステージではもっと!

別所:ジャン・バルジャンをやってましてね。映画だったらヒュー・グラントがやっていますけど。私ジャン・バルジャンを10年やらせていただきました。

冲方:ジャン・バルジャンですよ。半端なかったですね。

司会2:ジャン・バルジャンからベンザブロックまでやってはったわけですよね。CMのベンザブロックまでやってはったわけですよね?

別所:そうですね、それもやりましたし、ハムの人も10年やりました。

司会2:ハムもまたすごい活躍の場が・・・

別所:いろんなことをやらせていただきました。(笑)僕からの第一印象は、(冲方さんは)作家さんなんですけどすごく柔軟にいろんなことに応えてくれるし、はっと気づかされることがあります。それから彼は国際派でいらっしゃって、海外生活も長いんです。どちらでしたか?

冲方:シンガポールとネパール。

別所:そういったところに知性と、国際派な面を感じて、フォーリンラブです。

司会2:フォーリンラブ!結ばれるために生まれた二人ですからね。女性陣が、ニコニコニコニコしています。

別所:本当に二人の中で目指している方向が(一致しているんです)。僕は映画・エンターテイメントから入りましたが、さまざまな権利関係とか物語とかいうのを、どういう風に前に進めていくか。また真面目な話をすれば、20世紀ではなくて21世紀型のエンターテイメントって、みなさんとどういうふうに作っていくべきなのか。そういうテーマがあって僕は「ブックショート」というアプローチをとりました。一方で冲方さんも同じように(考えているのは)、入り口は違いますが、ご自身の作品をみなさんに開放し、二次創作を目指すところで繋がっていくわけです。考えてみると、さっきもご覧いただいたように、芥川龍之介も実は「もも太郎」を書いているんです。昔話の「もも太郎」を使って、自分なりの「もも太郎」を芥川龍之介として書いている。冲方さんもきっと、昔話や落語、あるいは時代劇の物語の中からいろいろな着想を得て新たなものをつくっていらっしゃると思うし、その二次創作というのは大事な原点と考えいるのではないですか。

冲方:物語っていうのは、コミュニティの中で代々受け継がれてきたものなんですね。で、その物語を語る中で一番重要なのは言語ですけれども、僕たちは誰もこの言語を作っていないんですよ。誰かが作ってくれたものを活用して、それを活用する中で新たな言語が生まれていくと。そうすることで、その時代その時代に即した物語・ストーリー・世界観(が生まれる)。例えば日本が鎖国していた時代と国際関係のある時代とでは、「もも太郎」の解釈も変わってくる。例えば鬼の扱いなんかが時代ごとに全く変わってくるんですよね。

別所:ロミオとジュリエットは有名ですけれども、これもバズラーマンという人によって、レオナルド・ディカプリオ主演で、現代アメリカのフロリダで起きているマフィアの抗争のような話に生まれ変わり、映画としても大成功しています。またもっと昔になれば「ウエスト・サイド・ストーリー」があります。これはレナード・バーンスタイン作曲のミュージカルとしてとても有名な、不朽の名作ですが、もともとの着想はシェーク・スピアのロミオとジュリエットだったりするわけです。物語の原点から物語を成長させるところに、二次創作とか、なにかキャラクターを育てるスピンオフといったものが結構ありますよね。

冲方:本来そうやって語り継いできたんですよね、すべての物語というのは。誰かがそれをやらなければならない。ただそのなかで、物語を作るという、本来経済の中で特殊な位置にあったものが一般化されて、他の商品と同じように「権利」というものを扱わなければならなくなったとたんにややこしくなってきたんですね。

別所:そうですね。皆さんもご存知だと思います。映画も作れば、音楽著作権、あるいはシンクロ権といいます。映画にはその音楽の著作権があり、あるいは物語の原作者、映画化権、そういったものがあります。そしてアニメになったりする、あるいはマーチャンダイズにもいろいろあるわけです。ですが今まで、自身で二次創作権を皆に開放すると言った作家さんなんていたかなあと。

冲方:漫画家さんだといらっしゃるようですけれども、その度に色々な権利関係の問題を聞いていましたので、ちょっと違うやり方をしなくてはいけないなあと。また小説の場合だと、シェアワールドというか、「ある作家が考えた世界観を他の作家さんに提供し、そしてそのひとつの世界を皆で書く」というような、アンソロジーを組むといったような、あるいはシリーズを共有するみたいなことは、昔から試みられていたんです。ですがそれはやはりプロ同士の世界での話ですよね。アマチュアだとか、あるいはプロだけれどもたまにはアマチュアのように遊びたいという人であるとか、アマチュアでプロ志願の人たち、何もやったことがないけれどちょっとやってみようかなという人たちを含めた場というのが、これがやはりなかなか出来上がっていない。

別所:そういう場を作れば、今はインターネットもあるし、ニコ動(ニコニコ動画)の放送みたいなものもあって、まさに下克上のような新たなサクセスストーリーが生まれたり、あるいは冲方さんの背中を追いかけて新たな作家が出てくるというような、そういう時代になりますよね。

冲方:そうですね、時代はたぶんもうそうなりつつあるんでしょうね。社会が追いついていないとか、会社が追いついていないという(ことだと思います)。

別所:でも、冲方サミットも冲方塾も、先程いた披露宴にご列席されるようなお姿の、各出版社の皆さんをはじめ、さまざまな方々が一丸となって「冲方ラバーズ」として集まっているわけじゃないですか。こういう渦を作るって、なかなかあるようでないですよね。横断的にやるというのは。

司会2:「冲方塾」と初めに聞いたときはどうでした?

別所:いやあ、武者震いしましたよ。色々な「塾」というのは過去にもあるじゃないですか。(そんななかでも)新しい21世紀型の物語や小説、あるいはもっと広く言えば僕たちがかかわっているような映画や演劇といったエンターテインメントの世界も巻き込んだ新たな渦が冲方塾から生まれ、2015年、歴史に刻まれる。皆さんはその歴史の証人になるかもしれない。そして100年後の歴史小説にはあなたたちが登場するかもしれない。そうでしょ。

司会2:大きい。壮大な話ですね。(冲方さん)どうですか、それを聞いてみて。

_MG_1402冲方:こういう規模のことをナチュラルに(別所さんは)言うわけですよ。飲み会で伺ったお話っただと思うんですが、日本でショートフィルムを発表する場がないから作ろうとされたわけじゃないですか。それで、「じゃあ、スピルバーグにメールしよう。」そういくんです。

別所:スピルバーグでなくてジョージ・ルーカスですよ。(笑)

冲方:ジョージ・ルーカス!

司会2:どちらでもすごいです。(笑)

冲方:どっちもすごいですよ。

別所:ルーカスにメールしちゃって・・・

司会2:え、メールしたんですか?

別所:そうですよ。ルーカスフィルムから返事があって、この映画祭に17年間ジョージ・ルーカス監督にも応援をいただいております。だけどやっぱりそれはジョージ・ルーカスさんも、初めの一歩というのは無名の時代にショートフィルムを作ったり、さまざまな物語をつむいだりしているときに、ノックをして、未来にむけて後押ししてくれた人がいたんでしょうね。実際に、今年の映画祭パンフレットの中に(ルーカスから)いただいたレターにもありますが、彼を応援したのはフランシス・フォード・コッポラだと。コッポラが後押しして、「アメリカン・グラフィティ」のような作品やスター・ウォーズが生まれた。ですから、必ず先輩が後輩をひっぱりあげたり、(彼らに)新たな道を開くというのはあって、冲方さんの「冲方塾」というのはまさにそういう塾になっていくのではないかなと思います。

司会2:そうおっしゃっていますが、冲方さんどうですか?

冲方:僕をトレース必要はないんです。コッポラに背中を押されたからといって、ルーカスはコッポラのような作品をひとつも撮らないわけじゃないですか。「あなたはあなたの道に進んでいいんだ」と。その術や、経済状況とか会社の状況とかいう、探検のための必要な材料を渡すことはできる。

別所:そういう渦を作っていることで、僕は今日冲方さんに聞きたかったのが、「二次創作」という言葉の中にはけっこう色々なものが隠れています。例えば映画で言うとよくオマージュという言葉を使ったりする。誰々へのオマージュ、たとえば「ヒッチコックへのオマージュ」。もうお忘れになってしまったかもしれませんが今日最初に観ていただいた映画、あの作品も「ヒッチコックへのオマージュ」というかたちで作られたものです。それとパロディというものとスピンオフ、もっと大胆にいくとモノマネ、なぞる、というのもある。ひとつのことを色々な形で見るというと、(それに対する)表現はいろいろあると思うんです。これについて冲方さんどう思われますか?

冲方:現状だと、極端に大きく分けたときの一つが 「海賊版」です。これは(二次使用ということを)利益を出すための手段としてみている。しかもその利益が、特定の個人や事業主にしか入ってこず、業界全体はそのせいで疲弊していく。これはいけない。一方で二次創作やパロディ、モノマネ、オマージュ、リスペクトといったものは人材を育てる、ひいては業界を育てる、マーケットを大きくしていく。また(二次創作をする中で)新たな権利関係が生まれてくる可能性もありますが、(そもそも二次創作自体が)“権利関係が業界の発展をとめてはいけない”というカウンターとして成立していると思うんです。

別所:そうですね。これはどんなアート、芸術においても(言えます)。僕たち俳優でも尊敬する先輩がいたり、映画で見た「あの人のようになりたい」と思ってその人の演技を真似たり、あるいはその映画を何回も観るということがあるわけです。お笑いの世界でも、あるいはアニメ業界でも同様だと思うんですが、これは大事なことではありますよね。

冲方:実際に僕もデビューする前は、ひたすら模写していましたしね。

別所:へえ!

冲方:小説の模写ですけど。ひたすら書き写して、この人はなんでこの文章を選んだんだろうだとか、なんでこういうふうにしたんだろうかとか(考えていました)。翻訳小説なんかだと、原文からこういうふうに翻訳するのはなんでだろうとか。とにかく、形から吸収していくというのは非常に大事で、一番早い(方法です)。

別所:そのうち自分の基礎とか、自分らしさとかが生まれてきて、例えば画家でいうとデッサン画のように「俺はこの筆圧で、この道具で描こう」みたいなことになってくるんですよね。

冲方:模写をしていくと、だんだん自分の欲求も出てくるんです。「この文章は僕だったらこうしたい」というような。

司会2:小説の模写って初めて聞きましたね。

司会1:私もです。

別所:具体的に、尊敬されている作家さんというのはいらっしゃいますか?

冲方:やっぱり若いころはのべつ幕なしいいと思ったものをコピーしていきましたけど、多かったのは池波正太郎先生、隆慶一郎先生、スティーブン・キング。これ(キング作品)は苦行でしたけどね。本当に、書いても書いてもおわらない。あとは様々な作家先生の代表作ですね。全部写す時間がないときは、最初の5ページと最後の5ページだけ写すとか。

別所:へえ、面白い。

冲方:それが文章のテンポだとか、言葉の選び方、漢字をひらくひらかない、丸をつけるつけない、点をつけるつけない、傍線をいれるいれないだとかいうことの、色々なバリエーションを見ていく中で自分だったらどうするかという基準(を作っていくわけ)ですね。それはたくさんの模写をしないと身に付かないものです。

別所:まさにスタイル探しですね。

司会2:「書いて覚えろ」と小さい頃に言われるのもそれですもんね。書けば脳に入ってきやすい、何か得られると。いい話ですねえ。

別所:なんだか、この結婚は大きくなるねえ!子どもを生まないといけないなあ。

司会2:その話に戻しますか?(笑)あのスタイルから始まったトークとは思えないですね。これは飲んでいる席でもなかなか聞けない話ですもんね。熱い話。


Part4に続く

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